核禁条約参加求め新組織 長崎県内被爆者、市民団体など結束 核巡る情勢に危機感

「核兵器禁止条約の会・長崎」の結成に向けた会合後、会見する朝長氏(左)=長崎市岡町、長崎原爆被災者協議会

 長崎の被爆者団体や市民団体などが、日本や世界各国の政府に核兵器禁止条約への参加を求める新組織を結成する。団体名は「核兵器禁止条約の会・長崎」。ロシアのウクライナ侵攻により核情勢や核政策が不安定さを増し、国内でも「核共有」論が語られる中、被爆地長崎の各団体が結束して、被爆の実相や同条約の意義を広める必要があると判断した。5月にも正式に発足する見通し。
 長崎市内で5日、非公開の会合を開き、結成を申し合わせた。
 終了後、記者会見した共同代表の「県被爆者手帳友の会」会長の朝長万左男氏(78)らによると、長崎の被爆者4団体の代表者と被爆2世の計5人が共同代表を務める。他にも、被爆証言誌を発行する「長崎の証言の会」など市民団体や非政府組織(NGO)計5団体も加わり、連携して集会や学習会の開催、国際会議への参加などの活動に取り組む。事務局は長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)に置く。
 新組織は2016~21年、全ての国・地域に同条約の批准などを求める「ヒバクシャ国際署名」に取り組み、本県で50万筆超を集めた県民の会が母体。各団体は昨年の解散時に「世界の核情勢次第でもう一度運動体を組織する」ことを確認していた。
 今年2月以降、ロシアのプーチン大統領が核兵器使用を示唆して威嚇。日本でも、安倍晋三元首相らが米国の核兵器を日本国内に配備し共同運用する「核共有」政策導入を議論するよう提言するなど核を巡る情勢が不透明になったことから、県民の会の中心だった被爆者団体が再結集を呼びかけたという。
 朝長氏は「戦争の場で核兵器が威嚇に使われ、それを利用した安倍氏の(核共有)発言も出た。2022年はとんでもない年になるぞと(感じた)。新しい会で核なき世界を目指す」と危機感と決意を語った。

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