「相手」への感謝

 「急に相手が変わって対策がどうこうより、近江さんが準備して試合をさせてくれたことがありがたかった」。試合後の監督談話がとても印象的だった。先の選抜高校野球、大熱戦の末に敗れた長崎日大高▲相手の近江高(滋賀)は、新型コロナの陽性者が出て出場を辞退した学校の代役として、開会式直前に繰り上げ出場が決まった。その後の快進撃はまだ記憶に新しい。何だか「縁」を感じて戦いぶりを見守った県内のファンも多かったはず▲必要な人数が道具を持ち寄って集まり、飛び切りの舞台が用意されても、対戦相手がいなければスポーツのゲームは始まらない。感動も興奮もその先の話だ。そのことを改めて思ったこの春▲相手への敬意と感謝。〈僕は捕手ですが、相手の打者の1打席目には「よろしく」って言うようにしています。1番から9番まで全員に〉…高校、大学と名門チームで主将を務めた選手のこんな話が少し前に全国紙で紹介されていた▲対戦相手といえば…。11月のサッカーW杯の組み合わせ抽選が先日行われ、日本は優勝経験のあるドイツ、スペインと1次リーグで同じ組に入った▲日本の上位進出を危ぶむ気の早い観測もあるが、敬意を持って試合に臨むにはこの上ない相手だ。“W杯っぽいW杯”になりそう-期待が膨らむ。(智)

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