「過保護」からの「自立」、親の負担減 新たな少年野球チームが取り入れた電車移動の狙い

東京・北区で活動する「BLOSSOM BASEBALL CLUB」【写真:本人提供】

東京・北区を中心に活動する軟式「BLOSSOM BASEBALL CLUB」は積極的にインスタ発信

部員不足により、新たに生まれた少年野球チームが、積極的な取り組みを続けている。東京・北区で活動する小学生対象の軟式「BLOSSOM BASEBALL CLUB」は保護者の負担を減らしたい、野球を楽しく続けてほしいと願う、社会人野球名門チームOBらがコーチとなって、子どもたちの自立を導いている。お茶当番はもちろん、車出しも原則禁止にし、基本は電車移動。練習を休む時の“すみません”連絡もNGにする他、技術指導ではリズムトレーニングを導入。発足約3か月で4月4日には公式戦初勝利を手にした。試行錯誤しながらも、前に進んでいる。

【動画】頑張れ!と声かけしたくなる 子どもの自立と親負担軽減を感じられる電車移動の様子

公式インスタグラムを見ると、興味深い練習方法が並ぶ。「ダンスレッスン」「リズムステップ」「じゃんけん逃走中」。指導者の工夫が見て取れる。社会人の強豪JR東日本で投手としてプレーした片山純一さんや軟式の社会人チームでプレーしていた石井翔平さんらがチームを作り、土日の少ない時間(基本は4時間)で指導をしている。

片山さんらは新たにチームを発足するにあたり「野球人口を増やしたいですし、“しがらみ”で野球やめる子を無くしたい。子どもがうまくなる環境を作ってあげるにはどうすればいいか」と様々なチームを見てまわった。リズムトレーニングを取り入れているチームを参考にし、自分も勉強して資格も取った。野球をやる上でリズム感や球技では取り入れることのできない“必要な”動きがダンスにはあると知り、練習メニューに組み込んだ。

高校、大学、そして社会人と野球や人生経験は豊富だ。だが、子どもたちを成長させていくためには何が必要かを日々、考えている。練習時間も朝から夕方までやるのではなく「3~4時間の方が集中的にできる」と、低学年と高学年を午前、午後で2部練習に分けたりもする。保護者との距離感も大切で「できるだけ、保護者の関わりを無くしたい」と練習見学は自由だが当番は当然なし。コーチたちで行っている。

試合や遠出の時にある保護者の「車出し」もなし。大会や試合の時はまずは地元の最寄りの駅で集合。コーチが引率して電車移動をする。

「球場への送り迎えは楽なのですが、野球が過保護すぎじゃないかなと思う時もあります。もちろん車内では大きい荷物は人に当たらないようにしていますし、運べないような道具はコーチが持っています」。

東京・北区で活動する「BLOSSOM BASEBALL CLUB」【写真:本人提供】

「『すみません』というLINEって誰に謝っているんですか?」

車出しを理解、協力しあってできる保護者の良好な関係が築けているチーム方針ならば問題はないが、自宅やグラウンド、駅までの距離が遠く、地理的に車移動が必要なところもあるため、すべての地域、チームには当てはまらない現実もある。だが、このような試みは電車の乗り方を覚えるなど、子どもの自立にも役立つ。このチームでは、帰りだけは家庭の都合もあるため、遠方のグラウンドへの車での迎えは容認しているが、行きは必ず全員、電車でグラウンドへ向かわせる。今では電車の乗降がスムーズになり、子どもたちの成長を感じている。

練習の出欠確認もしばらく戸惑った。練習を休む時の連絡は必要だが「『すみません』というLINEが来るんです。これって誰に謝っているんですか? と思いまして」。練習を休むことは悪いことではない。そこに違和感を覚えたため“出欠アプリ”を導入し、「○(マル)と×(バツ)を付けるだけにしました。出欠を確認する係の人を付けているチームもありますが、役割を与えてしまうとその保護者は頑張って『まだですか?』と聞いてしまいますし、言われる方も苦痛だと思います」と保護者の精神的な不安を解消した。

他のスポーツ競技との掛け持ちもOK。「ダメな理由がないですよね」と考えは柔軟だ。少年野球は年間の試合数も多いが「できるだけ、土日のどちらかしか試合を組みません」。小学生の体力的な問題と、「野球は覚えることが多いので、インプットさせてから試合に出てほしい」と願うからだ。そうでないと達成感が得られないと考えている。

積極的な取り組みを続けるが、学びを止めず、試行錯誤を続けている。インスタグラムにも、画期的な練習メニューを取り入れているのがよくわかる。4月4日には、チーム発足から約3か月で、高学年も低学年も公式戦初勝利を飾った。勝つことと楽しさの共有へ――。子どもたちの成長は簡単にはいかない。保護者の関わりなど、向き合わないといけない課題が少年野球界には多く存在するが、このような一歩が、明るい未来へと続いている。

○BLOSSOM BASEBALL CLUBは4月17日(日)と24日(日)に体験会を行います。詳細、お問い合わせはInstagram DMやホームページまで。

・Instagram
https://instagram.com/blossom_baseball_club?utm_medium=copy_link

・ホームページ
https://blossombaseballclub.1web.jp(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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