山川が復帰熱望も「走れなかったら使わない」 西武・辻監督が抱えるジレンマ

西武・辻発彦監督【写真:荒川祐史】

主砲離脱後は得点力も激減、代役4番おかわり君も打率.119

■ソフトバンク 8-1 西武(8日・ベルーナドーム)

戦列に戻すべきか、時間をかけるべきか──。西武の辻発彦監督が、ジレンマに悩まされている。チームは8日、本拠地ベルーナドームで行われたソフトバンク戦に1-8と大敗し、2020年8月以来2年ぶりの7連敗を喫した。主砲の山川穂高内野手が3月30日の日本ハム戦(札幌)で走塁中に右太もも裏を痛め戦線離脱。翌31日以降から7戦全敗と急降下している。

この日は頼みのエース・高橋が3回に先制点を許し、4回には4連打などで一挙4点を奪われた。打線はその裏、ソフトバンク先発の千賀から連続四球を得て無死一、二塁とするも、続く栗山が投ゴロ併殺に倒れ逸機。5回にも先頭の柘植が左翼線二塁打を放ったが、得点につなげることができなかった。辻監督は「4、5回に向こうが崩れてチャンスをくれたのに、モノにできなかったことが悔やまれる。打線がもう少し活気づいてくれれば……」と天を仰いだ。

試合前には、抹消中の山川が練習に参加し、フリー打撃にも取り組んだ。出場選手登録できるのは最短でも週明けの4月11日だが、主砲の明るい表情は早期復帰を予感させた。ところが、辻監督は楽観していない。「とりあえず明日、明後日も練習参加はさせるけれど、走れなかったら使わない。まだまだ難しいでしょう。最初(故障した当初)から打つことは苦にしていないが、それほど走れないからね」と言う。

西武は開幕から5試合を4勝1敗と快調に滑り出したものの、打率.444、4本塁打、9打点と絶好調だった山川の離脱後は、1試合平均得点が「4.2」から「1.7」へ激減。3日には森友哉捕手も右人さし指の骨折で抹消され、戦力ダウンに拍車をかけた。指揮官としては山川に1日も早く戻ってほしいのはやまやまだが、「そこで大事になったら終わり。長引くことだけは避けたい」との思いがストップをかける。

打線に起爆剤見当たらないが…「故障した選手も徐々に戻ってくる」

自ら復帰を猛アピールした山川の姿には、「こういうチーム状況だから、居てもたってもいられない気持ちなのだと思う。それはうれしいし、その気持ちがチームに伝わってくれればいい」と感謝しつつ、複雑な表情を浮かべるのだった。

山川の代わりに4番を張る38歳の中村剛也内野手も8日現在、打率.119、0本塁打、2打点と不振。辻監督は「感じはそれほど悪くない。開幕して10試合から20試合は数字が上がらない時もあるし、キャンプから1か月後というのは疲れが出やすい時期でもある」と話すが、今のところ打線に起爆剤は見当たらない。

ただこの日、右内転筋の張りで開幕ローテから外れた今井達也投手がイースタン・リーグの巨人戦で実戦復帰し、2回を無安打無失点に抑えたのは一筋の光明。左脇腹の違和感で開幕1軍を逃した中継ぎの森脇亮介投手も、順調に2軍で実戦を重ねている。

「故障した選手も徐々に戻ってくるし、中継ぎの投手も投げ始めているので(1軍復帰が)見えてくると思う」と辻監督。「今までやってきたことを諦めずに続けるだけ」と語気を強めた。42年ぶりの最下位から巻き返しを誓った今季、出足好調から突然落とし穴にはまった格好だが、メンバーのそろわない今が正念場だ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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