貯金200万、手取り年収500万の40代夫婦「我が家の家計で私立中学は敷居が高い?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、40代共働きのご夫婦。子供を私立中学に入れたいと考えていますが、貯金は200万円ほど、毎月約37万円の収入で収支はわずかに黒字という状況で、やっていけるのか心配されています。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。


小5の子どもがいる夫婦です。

新型コロナで休校中の学校の対応が不満だったことや、PTA活動などが気になり、中学校に進学するときは、オンライン授業やサポートが充実している私立中学校を受験させたいと考えています。この春から慌てて塾に通わせているため、合格できるかどうかわかりませんが、良い教育を受けさせるためには私立がよいでしょうから、授業数や自習時間を増やすようにして、受験に間に合うように息子に頑張ってもらっています。

ですが、私立中学校は学費も高く、貯金も十分ではない我が家には敷居が高いというか、無理しすぎなのではないかと思うこともあります。このまま頑張って私立中学校に行かせたとして、我が家は将来、やっていけるかどうか、家計状況を見ていただきたいです。

また、老後資金も気にしなくてはいけないとも思っています。最近よく聞く、iDeCoやつみたてNISAを始めようかと思うのですが、投資は全く初めてです。どのように始めるとよいかのアドバイスもいただけると嬉しいです。

【相談者プロフィール】

・女性:40歳、パート ・夫:43歳、会社員 ・息子:小5

・手取り収入:月収37万4,000円(妻4万8,000円、夫32万6,000円)

年間ボーナス約50万円(夫)

・貯蓄:預貯金約200万円

・毎月の支出の目安:37万1,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:8万8,000円(ローン)

・食費: 5万1,000円(外食含む)

・水道光熱費:1万4,000円

・通信費:1万5,000円(スマホ3台、ネット)

・生命保険料:2万円

・日用品代:1万3,000円

・医療費:1,000円

・教育費:6万2,000円

・交通費:3,000円

・被服費 :1,000円

・交際費 : 3,000円

・娯楽費:2,000円

・こづかい:5万2,000円

・その他:4万6,000円(理美容・サブスクなど)

FP:中学受験を考えていらっしゃるのですね。首都圏では新型コロナ云々というよりは「良い教育を受けさせたい」「高校受験をしなくて済むように」等という理由で、この8年ほどは右肩上がりで中学受験者数が増えていると聞きます。お子さんも入学を希望しているのであれば、お子さんが勉強を頑張る分、親は家計を整え、学費を工面できる態勢にしたいものです。

私立の学費を出すには貯金不足

家計状況を拝見すると、わずかに黒字の状態。ですが、貯金は生活費の5か月分少々で、「生活防衛資金」に足りていません。

中学校の年間学納金は、学校にもよりますが、初年度でおよそ120万円前後かと思います。2年目はもう少し安くなるかもしれませんが、もし、今の塾代を学校納入金にシフトして納入していくにしても、毎月6万円分を1年分で、約72万円しか準備できません。不足する金額は、家計を絞ったり、ボーナスの使い道を検討してねん出しなくてはなりません。

もし、やりくりでカバーできなければ、十分ではない生活防衛資金を切り崩さなければならなくなります。そうなると、もしご夫婦のどちらかが失職したり、ご病気をされたりし、収入が十分でない時期が続くと、生活も学校の継続も難しいということになりかねません。そのような事態を防ぐためにも、今のうちから毎月の黒字額を増やす、貯金を増やすことに取り組むべきです。

入学にあたっては、学校納入金だけではなく、パソコンやタブレット代、制服代や鞄など学用品代などが入学時には必要ですし、毎月では交通費や間食代などが必要になることも多く、意外とお金がかかります。

毎月かかる生活費を小さくしておくと、こういった支出にも対応しやすくなります。支出の一つずつを見直し、食費や日用品代、通信費やその他の費目に含まれるような支出の改善策を検討し、実行していきましょう。

高校に入学すると、負担は楽に

ご存知かと思いますが、私立中学校の授業料に関する補助はありません。収入に関係なく、入学したら全額自己負担となり、3年続きます。

ですが、高校生になると「高等学校等就学支援金制度」が使えるようになります。所得制限があり、使えるかどうか、いくら補助されるかは、区市町村民税課税額で判定されます。

私立高校の支援金額は、国(文部科学省)の上限は39万6,000円ですが、各自治体ではこれに独自で上乗せをしているケースも多く、東京都なら国より9万3,000円多い46万9,000円が上限ですが、在学校の授業料分しか使えません。

これが利用できると、このほかにかかる設備費等も併せた、本来かかるはずの年間の学校納入金の半分ほどを納めれば済むイメージとなります。

中学校のうちに学費をねん出しながら貯金もできる家計づくりをしておくと、高校に入ってからは今まで授業料として積み立てる予定だった金額を貯金に回すことができ、大学進学に向けての資金作りもしやすくなります。こうしたことからも、今のうちに支出を小さくした生活を習慣化させておくメリットがあることがわかるでしょう。

老後資金は黒字が安定してから貯金の一部で

ご夫婦の老後資金は、家計を見直し、黒字額が安定し毎月一定額の貯金ができるようになったら、その金額の一部を積み立てて作っていくとよいと思います。

お二人とも40代前半ですし、今からだと20年以上積み立てていくことは可能でしょうから、抵抗がないようでしたら投資信託の積立投資を検討してみてはいかがでしょうか。

黒字額を全部投資に回すのではなく、息子さんの学校納入金等が落ち着くまで、または生活防衛資金として月収の1.5か月分~12か月分が貯まるまでは貯金に重きを置き、投資はその一部でするようにしていくとよいでしょう。

5,000円程度から始め、慣れてきて、支出改善が順調に進んだら金額を増やすやり方でよいと思います。投資信託の積立投資は、長期・分散・低コストで運用できると比較的リスクが少なく、複利の恩恵を受け、資産を増やせる可能性が高まります。もちろん、長い目で見ると増えたり減ったりの波はありますが、少しでも早く始めると時間を味方につけることができ、増える傾向となりやすいのです。ですから、少額でも、早めに始めてみてはいかがかなと思います。

方法は、普通の積立投資でもよいですが、つみたてNISAやiDeCoなどの税制優遇制度を使うと、節税効果で有利に投資を積み上げていけます。

家計を絞って息子さんの学費を支払いつつ、老後資金作りにも着手することで、相談者様とご家族の納得のいく形にしていけるのかなと思いますが、もし、上手くいかないようなら、相談者様のパートを増やすなど、収入アップも検討していかなくてはならないかもしれません。それぞれが納得いく将来を目指せるよう、頑張ってください。

© 株式会社マネーフォワード