お手盛りのお手本

 えっ、そんなにたくさん…。でも周囲はその不満を声にできない。「お手盛り」は、強い立場にある者が、自分の手で好きなだけ器に食べ物をよそうことからきた言葉とされる。手元の辞書には〈自分たちに都合のいいように取り決めること〉と▲「お手盛りのお手本」を見る思いがする。昨年秋の衆院選後に「在職1日でも満額支給」が問題化した国会議員の文書交通通信費を巡る法改正がきょう参院で成立する見通しになった▲新人議員の素朴な疑問をきっかけに批判の的になった月割りでの支給は日割り計算に改められることになった。ただ、前進とか是正と呼べそうなのはこの点だけだ▲名称は「調査研究広報滞在費」に変わり、支給の目的には「国民との交流」の文言が加わった。「第2の給与」として扱われ、幅広い使途に充てられている現状に合わせた変更というのだが▲国民の視線が集まったのを契機に費用の使い勝手を好都合に広げるのでは、言葉は悪いが“焼け太り”というやつだ。「月額100万円」の金額は話題にも上らず、使途の公開や未使用額の国庫返納は合意に至らず先送り▲法改正を急いだのは、24日投開票の参院補選に間に合わせるため。期限ぎりぎりにようやく手を付け、空白だらけで出す宿題帳。覚えがないとは言わないが。(智)

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