メクル第621号 平和ってなにか考えよう 長崎市立図書館で絵本作家・長谷川義史さん講演

絵本を通して平和の大切さを語りかける長谷川さん=長崎市、市立図書館

 絵本や遊びを通して平和について考えるイベント「みつけよう! へいわのスイッチ」が3月25日、長崎市興善(こうぜん)町の市立図書館で開かれました。「いいからいいから」シリーズなど、ユーモラスで楽しい絵本を数多く出している作家の長谷川義史(はせがわよしふみ)さん=大阪市=が講演(こうえん)し、自身の絵本の読み聞かせを交えながら、平和への思いを話しました。

 はじめに長谷川さんは、ロシアによるウクライナ侵攻(しんこう)の状況を踏(ふ)まえて、「こんなことになんねんなと改めて思った。楽しい絵本を読めるのも平和であると気づいて、考える時間にしたい」とあいさつしました。
 読み聞かせた絵本は、「おならまんざい」(2017年)、「おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん」(00年)、「おへそのあな」(06年)、「8月6日のこと」(11年)、「ぼくがラーメンたべてるとき」(07年)、「へいわってすてきだね」(14年)など。長谷川さんの戦争反対への思いや平和を願う気持ちがにじむ作品です。
 「ぼくがラーメンたべてるとき」は、男の子が家でラーメンをすすっているその瞬間(しゅんかん)にも、世界では同じ年齢(ねんれい)くらいの子どもが遊んでいたり、牛を引いて働いていたり、倒(たお)れていたりしているということを、たんたんと描(えが)き出しています。今、地球のどこかに飢餓(きが)や戦争で苦しんでいる子どもがいるかもしれないということを突(つ)きつけ、視野(しや)を広げてくれます。
 「同じ時間にこういうことが起きていると、想像力(そうぞうりょく)をもって考えなければと思って作った絵本。平和はどこかからもらうもんじゃない。ある日一気に奪(うば)われる。毎日毎日気を付けていかないといけない」と話しました。
 「へいわってすてきだね」は、2013年6月23日の「沖縄全戦没者追悼(おきなわぜんせんぼつしゃついとう)式」で、当時小学1年の安里有生(あさとゆうき)さんが朗読(ろうどく)した詩に、長谷川さんが絵を付けた絵本です。
 「へいわってなにかな。ぼくは、かんがえたよ。」から始まり、安里さんの沖縄県・与那国(よなぐに)島での暮(く)らしこそが平和であると伝えています。

長谷川さんの話を聞く参加者=長崎市、市立図書館

 長谷川さんは「島でヤギや馬がその辺にいる、その普通(ふつう)の状態(じょうたい)っていうのが今とても大切で、平和でいたいという気持ちには垣根(かきね)がないと言っている。先の戦争でひどいめにあった人たちからバトンタッチしてもらって、僕(ぼく)らは平和にやってこられた。大人はそれを守って、次の人に伝えないといけない」と訴(うった)えました。
 講演を聞いた長崎市立戸町小2年の三浦一眞(みうらかずま)さん(7)は「戦争がなければいいなと思った。みんなが優(やさ)しい心を持つことが平和だと思う」、市立滑石(なめし)小6年の渡辺絵梨佳(わたなべえりか)さん(11)は「『へいわってすてきだね』の詩に納得(なっとく)した。平和のために、友達と仲良くすることから始めたい」と話しました。
 この日のイベントは長崎市平和推進(すいしん)課が開き、講演会には0~12歳(さい)の子どもたちやその保護者(ほごしゃ)ら100人が参加しました。

◎長崎の子どもたちへ/長谷川さんのメッセージ
 長崎にはご縁(えん)があって、毎年のように県内あちこちに来ています。長崎弁(べん)いいですよね。長崎市のまちはやっぱりちょっと外国みたいやし。離(はな)れるとまた全然違(ちが)って、自然がいっぱいで。食べ物はおいしくて。
 わははって笑って笑顔になってもらえるような楽しい絵本を描(か)いています。楽しく笑っていられるのも平穏(へいおん)で、普通(ふつう)で、平和であるからこそ。普通のありがたさ、普通は実は普通じゃないんだということを、みんなで感じながら、平和を守っていきましょうね。

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