「言論の自由」「知る権利」議論 本島氏銃撃事件に焦点 長崎で「3.1市民集会」

「言論の自由」について意見を交わす(右から)関口氏、井上氏、山口氏=長崎新聞文化ホール・アストピア

 長崎新聞労組(山口恭祐委員長)は9日、長崎市茂里町の長崎新聞文化ホール・アストピアで「3.1市民集会」を開いた。32年前の本島等長崎市長銃撃事件などを取材した元NBC記者で、フリージャーナリストの関口達夫さん(71)らが「言論の自由」や「知る権利」をテーマに意見を交わした。
 本島氏は、昭和天皇の戦争責任について「ある」と発言し、1990年、市役所前で右翼団体幹部に撃たれた。91年3月1日には、この右翼団体の意見広告掲載を拒否した長崎新聞社の本社玄関に銃弾が撃ち込まれた。同労組は、翌92年からほぼ毎年、市民集会を開いている。
 30年の節目に「原点」でもある一連の事件に焦点を当てた。関口氏と、本島氏を長年取材した森永玲・長崎新聞社メディアビジネス局長(57)が講演。関口氏は、事件当時のメディアが「言論の自由」に論点を置き「昭和天皇の戦争責任」の議論を避けたと指摘し「マスコミにも戦争責任がある。責任を自覚し、国民の知る権利に応えなくてはならない」と強調した。
 パネル討論では、県立大国際社会学部の井上佳子教授(61)と、被爆証言誌「証言」の山口響編集長(45)を交え、メディアと市民社会の役割を議論。井上氏は「長崎には平和を重んじる文化がある。ウクライナ情勢を受けた核共有論にどう対抗するかを、メディアと市民で議論できる場をつくっていけるといい」と提言した。山口氏は「言論の自由には、メディアの背後にいる一般市民の支えが必要。暴力や排外主義を許さない報道に対し、市民もしっかり支持を表明していくことが大事」と述べた。
 市民ら約60人が聴講した。


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