【激論:規制改革と薬局vol.3】中部薬品(Vドラッグ)代表取締役専務 佐口弥氏「高齢社会に対応できる医療体制を日本が国際社会に提供していく時代が十数年後には来るのでは」「鎖国か開国かでいえば医療でも開国が起きてくる」

【2022.04.21配信】座談会参加者■プライマリーファーマシー 代表 山村真一氏<独立系薬局経営者の立場から>■I&H; 取締役 インキュベーション事業本部 岩崎英毅氏<大手調剤チェーン企業の立場から>■中部薬品 代表取締役専務 医療本部長 佐口弥氏<ドラッグストア企業の立場から>■帝京平成大学薬学部 教授 亀井美和子氏<アカデミアの立場から>■カケハシ 代表取締役社長 中尾豊氏<システム企業の立場から>【全5回】

――佐口さんはVドラッグの調剤担当役員でいらっしゃいますので、ドラッグストアの立場でどのようなところにご関心や課題をお持ちか教えていただければと思います。

佐口 私たちはバローホールディングスという売上高でいうと7300億円くらいのグル―プ会社です。その内訳としましては、スーパーマーケットが約4000億円、ドラッグストアが1500億円、ホームセンター事業として1300億円、その他スポーツクラブなどのグループ会社の売上で構成されています。

そのうちの医療に携わる、いわゆる薬局・調剤部門の売上が約180億円を占めており、そこの責任役員を務めております。そのグループの特性上、食や医療、スポーツという生活創造産業としての立場から医療についての意見を申し上げる事になると思いますので、よろしくお願い致します。

私たちは生活に密着した身近な医療人でありたいということを念頭に置いております。つまり患者様から必要とされる薬剤師でありたいと思っており、そこから外れなければ、どのような業態でも良いと考えています。薬剤師は国から「医薬品を提供しても良いですよ」と認められた職種ですから、その使命を全うする薬剤師を育成したいと思っています。

一方で、薬剤師として活躍する従業員やその業務をサポートする従業員の生活を守りたいと思っています。当社従業員が患者様に貢献することに喜びを感じて、人生が良かったと言ってくれることが経営者としての一番の喜びです。

私も薬剤師として振り返ると、10数年はドラッグストアで薬剤師として携わり、また10数年は薬局で薬剤師として携わってきました。またカイロプラクター(整体師)として患者さんを施術していた時期もありました。そのような現場畑の従業員が、まさか取締役になるなんて思いも寄りませんでした。今でも、現場感を持ち合わせた取締役で居ようと思っています。おかげさまで大学の講義を持たせてもらったりもしています。

私も調剤の外部委託に興味があります。私自身は、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)や日本保険薬局協会(NPhA)、地域薬剤師会にも参加させて頂いております。

その中で特にJACDSの調剤に関する委員会の一委員として出席し、次のように発言しました。「規制改革推進会議等で要望された調剤の外部委託の目的が、薬剤師が対人業務に注力するためという考えは否定しませんが、それと同時に、薬剤師1人当たり1日40枚の規制を撤廃することは避けて頂きたい」と。外部委託の考え方については、薬局には薬剤師が常駐し、医薬品在庫は無しという環境下で服薬指導が行われ、調剤自体は医薬品在庫が厳格に管理される工場にて一括で行われ、品質的にも量的にも間違いなく患者様の手元に届くようであれば、適切な医療を担保しつつ生産性も上がるため良いと思います。40枚規制については、全国的には薬剤師1人当たり1日平均20枚くらいを応需する状況下で、本規制を撤廃すれば、賃金格差が生まれるという懸念が残ります。そうすると不正が起きたり、政府が目指す賃金格差の是正に逆行することにもなります。

つまり、国民に貢献するために外部委託は容認するものの、現段階においては40枚規制の撤廃は、薬剤師である従業員を守るために反対したいというのが私の思いです。かつての日本の開国か鎖国かと言う議論にも思えるのですが、開国しなければ夜明けは無かったように医療の現場でも起きているのではないかと思います。この高齢社会で対応できる日本の医療を国際社会に提供していく、支援していくという時代は十数年後には来るのではないかと思います。そのような時代が来たら、私たちも一企業として参画したいと思っています。

――国際的な視点はとても興味深いです。そんな中で、また国内のことをお聞きして恐縮ですが、ドラッグストアさんが薬局を出店していくことと、1薬局の処方箋枚数が減少している実態との整合性についてはどのように考えていますか。

佐口 薬局の業態は法律によって変わることが多く、また法律は時代によって変わるため、その時々によって変化をしていこうと思っています。薬局が飽和状態な上に出店をかけるかという予測については、コンビニやスーパーマーケットもそうですが頭打ちまで来ると質に転換していきます。飽和によって質が磨き上げられるので、磨き上げられた企業のみが処方箋枚数を減らさず生き残っていくと思います。磨き上げというのは、例えば患者様の待ち時間をゼロにするという調剤全自動機器などのハード面もあるでしょうし、サービスを良くする、リスクをゼロにするとった色々かつ様々な質の向上があります。そこが各社の生き残り戦略なのだと思います。私たちはスーパーマーケットやスポーツクラブもありますから、病気にならないようにする術や国民を健康にする術を持っています。つまり「国民のために」という軸が、ぶれなければ自ずと戦略は見えてくるので、その時その時で戦略を考え薬局淘汰の時代を乗り越えようと思います。

――御社の足下を見ても質に転換してまだまだ出店していくということでしょうか。それとも出店ペースは鈍化すると考えていいのでしょうか。

佐口 質に転換して出店していくことになると思います。ただし、飽和状態の中では新規出店により疲弊するリスクが高まるので、買収を進めていくことになると思います。企業ごとに戦略は違うでしょうが、私たちが買収する薬局は地場で頑張っている薬局です。薬局を売却するオーナーは赤字になりそうだから売るという訳では無く、オーナーが引退するにあたって後継者のいないことを理由に売るケースがほとんどです。当社としての店舗数は新規出店数や買収等により増加すると思いますが、全国的にみれば、薬局数は増加していないという時代がくると思います。
<vol.4に続く>

中部薬品 常務取締役 医療事業本部 佐口弥氏
■さぐち・ みつる
平成8年6月 薬剤師登録
平成13年5月 中部薬品株式会社(本社:岐阜県) 入社
平成18年1月 同社 総務人事課 課長
平成23年3月 同社薬事部部長
平成26年3月 同社薬事本部本部長
同年6月 同社取締役就任 薬事本部本部長
平成30年6月 同社常務取締役就任 薬事本部本部長
令和4年4月 同社 代表取締役専務 医療本部本部長
現在に至る

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