「ユーリカ」の声を

 古代ギリシャのアルキメデスは、浮力と深い関わりのある「アルキメデスの原理」を浴槽の中で発見したと伝わる。喜びのあまり「ユーリカ、ユーリカ(見つけた、見つけた)」と叫び、裸で町を走ったという▲なにしろ2千年を超える昔の話で、どこまで本当なのか知りようもないが、見つけたい、知りたいという意欲が強いほど、それがかなった時の喜びもまた大きいと、この逸話は伝えている▲東大の社会科学研究所などが小中学・高校生の学習意欲を調べたところ、「勉強しようという気持ちがわかない」という答えが54%で、7年前に調査を始めて以来、最高だった。「見つけた、見つけた」の歓声も弱まりがちだろうか▲コロナ禍で友達と触れ合うことが制限され、給食も「黙食」が当たり前になった。学校生活から楽しさが減るのにつれて、学ぶ意欲も下がったとみられる▲最近の別の調査では、昨年4月以降に大学を中退した人は、前年の4割増しだったという。対面の授業、人との交流が乏しくて「学ぶ意欲が低下した」という理由が多い▲アルキメデスは「てこの原理」も解き明かしたが「小さな労力で大きな学習意欲を生み出す」という、てこのような妙案はそこらに転がっていないだろう。学びの場に「ユーリカ」の声を。社会全体の宿題でもある。(徹)

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