<社説>ロシア侵攻2カ月 一刻も早く停戦実現を

 ロシアがウクライナに侵攻してから2カ月が過ぎた。停戦交渉は暗礁に乗り上げている。戦闘終結の道筋は見いだせないまま、住民を巻き込んだ沖縄戦のように市民の命が奪われ続けている。 国際社会はロシア、ウクライナ両国が一刻も早く停戦を実現するために、あらゆる手立てを講じるべきだ。

 ロシアは2月24日に侵攻し、一気に支配地域を広げた。しかし、ウクライナ側の反撃で首都キーウ(キエフ)攻略に失敗し、東部へ集中する作戦に転換を迫られた。ロシア軍退却後の北部では、多数の民間人に対する「レイプ、拷問、処刑」(バイデン米大統領)が表面化した。民間人犠牲者は2万4千人を超えたと推定され、人道危機が一層深刻化している。

 停戦交渉は2月末から断続的に開かれ、合意文書の作成作業やオンライン協議も続いている。しかしロシア軍による凶行が明らかになったとして、ウクライナ側は態度を硬化させた。停戦に向けた首脳会談実現を含め、妥結の糸口は見いだせていない。

 戦闘長期化の懸念が強まっている背景に、米欧が火力を重視した軍事支援を加速していることが挙げられる。米国の軍事支援は計34億ドル(約4360億円)に上る。米欧の支援によってウクライナ側は徹底抗戦の構えを続けている。

 一方、日本政府は「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定し、戦争下のウクライナに防弾チョッキなどを供与した。新たに監視用ドローンも提供する。政府は攻撃をする兵器への転用を想定していないとの認識を示すが、ドローンの使用方法は事実上、ウクライナ側に委ねられている。軍事転用されても検証は困難だろう。なし崩し的な供与拡大は、平和憲法との整合性がとれない。

 民生分野で支援できることがいくらでもある。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ロシアの侵攻後にウクライナを離れた避難民は500万人に迫る。日本政府は人道支援に一層力を入れてもらいたい。

 日本は米欧と歩調を合わせてロシアの経済制裁に加わり、プーチン大統領個人を制裁対象とした。このためプーチン氏との対話は難しいとみられている。それなら、バイデン米大統領やウクライナのゼレンスキー大統領に戦闘の長期化を避けるよう働き掛けることは可能だろう。一刻も早い停戦につながるのであれば、あらゆる外交努力を続けるべきだ。

 国連は民間人保護や人道支援物資の搬入を目的とする人道的停戦を提唱した。今のところ具体的な成果は出ていない。そこでグテレス事務総長が26日にモスクワでプーチン氏やラブロフ外相と会談する。28日にはウクライナでゼレンスキー氏らと協議する。直接交渉によって深刻な人道状況の改善へ道筋をつけてもらいたい。

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