朝長佐世保市長“任期残り1年” IR可否 5選出馬に影響か 県議やダム反対派、水面下で動き

佐世保市長4期目の任期満了まで残り1年となる朝長氏。5選出馬の判断はIR誘致の可否が影響するとの見方がある(IRのイメージはカジノオーストリアインターナショナルジャパン提供)

 佐世保市長4期目の朝長則男氏(73)は29日で任期満了まで残り1年。来年4月の市長選への出馬について、朝長氏は「白紙」とする。多選の是非や、長崎県と同市が誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の可否が年内にも判明することを踏まえ、慎重に判断するとみられる。「朝長1強」とされた前回の選挙と異なり、現職以外に出馬を見据えた動きも出ている。
 「15年を積み重ね、スタート地点に立てた」。佐世保市議会がIR区域整備計画案の議案を可決した15日、朝長氏は報道陣にほっとした様子で語った。
 朝長氏は2007年の市長就任時から地元経済界と二人三脚でIR誘致を推進。重要施策に位置付け、基地政策や企業誘致などとともに注力してきた。
 佐世保市長の資質や実績について、経済界は「問題ない」と口をそろえる。ただ、過去に5期務めた市長はいない。朝長氏が出馬する場合、多選批判は避けられず、「5期は長いのでは」との懸念も聞こえる。
 ある市議は「出馬にはそれなりの理由が必要。IRは動機となり得る」と言う。IRの認定を申請したのは本県と大阪府・市の2地域。大阪より2年早い27年秋ごろの開業を計画する本県は、日本初のIRを目指しており、「開業に向けた準備には、経験豊富な市長が求められる」とみる。
 現職として臨んだ過去の市長選では、朝長氏は夏ごろから関係者に意見を聞いて回り、秋に出馬会見を開いている。これまでの取材に「(出馬の判断は)IRも見極める」としており、IRの可否が態度表明に影響する可能性がある。
 一方、周囲に「市長を目指す」と伝えたのが元衆院議員の宮島大典県議(58)。来春に挑むかは明言していないが、後援会幹部は「心構えはできている」。
 2月の知事選では、朝長氏を含む県内全ての市町長が現職候補を応援する中、宮島氏は自民県連などの推薦を受けて当選した大石賢吾氏(39)を精力的にサポート。有権者に「世代交代」を訴え、手応えをつかんだ。
 だが、旧民主党などを渡り歩いた宮島氏が自民寄りで動くことに、これまで支援してきた国民民主党の市議などとの間で不和も生じた。朝長氏の支持者も「(宮島氏は大石氏のように)若さをアピールできる年齢ではない」とけん制する。
 このほかにも、水面下で市長選に向けた動きがある。佐世保市が推進する石木ダム建設に反対する市民らが候補者擁立を模索。市長を志す保守系市議もおり、朝長氏の“後継”として期待する声もある。
 朝長氏は強固な後援会組織を持ち、市議、県議を含め過去10回の選挙で無敗を誇る。自民関係者は「現職が不出馬なら候補者が増えるかもしれない。今夏の参院選後、徐々に構図が見えるだろう」と読む。


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