「ゆうこう」の歴史を本に 記録網羅、年表や寄稿も 元長崎市職員・川上さん

「ゆうこう物語 温故知新・みさき道を歩いて」を出版した川上正徳さん=長崎市

 忘れられていた柑橘(かんきつ)類「ゆうこう」は、いかにして再発見され、長崎の特産品として広く知られるようになっていったのか-。ここ二十数年の動きに、当事者の一人として関わってきた元長崎市職員の川上正德さん(79)が、経緯を書き記した「ゆうこう物語 温故知新・みさき道を歩いて」を自費出版した。記録を網羅し、年表や関係者の寄稿も添えた充実作だ。

 川上さんは定年間近だった土井首支所長時代の2001年、同市土井首地区の「みさき道」と呼ばれる古道を散策中に地域の知人から、ゆうこうを手渡された。それが、ミカンでもカボスでもユズでもない謎の柑橘類との出合いだった。
 ゆうこうは、ジュース代わりに遠足へ持っていったり、魚のなますにかけたりしていたが、地域外では知られていなかった。川上さんが専門家に協力を求めたことを機に新種だと判明。分布調査で、同市外海地区や五島列島などで自生していることが分かった。
 地域の特産物として育てようという動きも活発化。伝統の貴重な食物として世界スローフード協会の「味の箱舟」に認定されたことが弾みとなり、現在はさまざまな業者が菓子類、マーマレード、みそなどの食品加工に取り組んでいる。
 二大自生地、土井首と外海。ゆうこうのルーツはどちらにあるのか。川上さんは「人の流れとゆうこうの分布を考えると、外海のものが各地へ広がっていったのでは」と、後書きで結論付けた。外海の潜伏キリシタンの移住拡散と深い関わりがあるのでは、という考えだ。
 同書の表紙カバーは市職員時代の先輩で版画家・洋画家の梶川清彦さん(2019年、85歳で死去)の油彩画「ゆうこうの里 外海風景」。長崎文献社刊。A5判、120ページ。500部発行し、市内主要書店で販売。1320円。

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