「今だからこそ核兵器禁止条約が必要」初めての締約国会議が来月開催 ICAN・川崎さんに聞く

ロシアによるウクライナ侵攻で、核兵器の使用が現実的な危機として感じられるイマ…。唯一の戦争被爆国である日本でも、非核三原則の見直しやアメリカとの「核共有」を求める声まであがります。そんな中、被爆者の悲願とも言える核兵器禁止条約の初めての締約国会議が来月オーストリアのウイーンで開かれます。この条約禁止条約の成立に尽力し、ノーベル平和賞を受賞した国際NGO「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」の国際運営委員である川崎哲さんに話を聞きます。

RCC

核兵器禁止条約は、核兵器の使用はもちろん、保有、開発、威嚇などを全面的に禁じる史上初の条約です。批准しているのは11日現在で、60の国と地域、署名しているのは86の国と地域となっています。

RCC

小林康秀キャスター
被爆者の長年の思いを具現化したようなこの条約ですが、現在、ロシアによるウクライナ侵攻で、日本国内でも「非核三原則」の見直しや「核共有」を求める声まで出て来ている。この状況をどう見ていますか?

ICAN国際運営委員 川崎哲さん
これまで核兵器があるから世界の平和が保たれると言ってきた人もいたが、実際、ロシアが行っているのは、核兵器の脅しの力を使って戦争を進めているという、おそろしい状態になっている。それを受けて、日本でも「核には核を」という非常に物騒で危険な声が出てきてしまっているというのが「核共有」の議論や「非核三原則の見直し」ということ。「核には核を」でいったら、どんどん核の脅威が高まっていく。やはりここは、「核兵器そのものがいけない」と、力強く言わないといけない局面になっている。

RCC

小林キャスター
核兵器禁止条約は、決して楽観的すぎる夢物語ではなくて、いまこそ現実的に注目されるべき約束ごと、ということでしょうか?

川崎哲さん
核兵器の使用や威嚇が明確に国際法違反だという条約はこれまでなかった。ようやく、核兵器を使う、脅すということは、もちろんロシアも含めて、全ての国においてダメだと定めた条約ができたわけですから、これを今こそ活用すべき。

■核廃棄の手順、核被害者への援助…締約国会議で議論されることは

小林キャスター
そして、いよいよ初めての締約国会議が6月21日から23日の日程で、オーストリアのウイーンで始まる。日程以外の具体的なスケジュールはまだ決まっていないそうですが、どういう議論がなされるのか?

川崎さん
条約は、さまざまな定めをしているが、第一には、いま60カ国が正式に加わっていますが、もっと増やす必要があります。これを増やすための取り組み方の話をします。あるいは、核兵器保有国が将来この条約に入ってきた場合、どういう手順、期間で、核を廃棄するのかの具体論も話をします。さらに、核兵器の使用や実験、核実験は世界で2000回以上なされ、世界中に被害者がいますので、そういった人たちの援助のあり方などが議題になります。

RCC

小林キャスター
被爆者の救済にも長年取り組んできたヒロシマとしては、日本に活躍の場があるんじゃないかと期待してしまいますが、日本は今のところオブザーバー参加しない、ということです。一方で、核保有はしていなくても、NATO加盟国であるドイツ・ノルウェーは、ある意味日本と同じ核の傘の下にありますが、参加の意向を表明しています。この違いはどのようなところにありますか?

川崎さん
ドイツの場合も、ノルウェーの場合も去年の秋の選挙で、政党がこの問題を取り上げて、選挙の争点にしました。自分たちが政権を取ったらこの条約に加わっていく、少なくとも議論には加わっていくことを掲げて、政権交代があったわけです。そういう政治家を巻き込んだ議論の中で、オブザーバー参加がなされた。日本でも、もう少し国会の中で、被爆国日本が果たすべき役割、オブザーバー参加の議論がなされないといけないと思います。

RCC

小林キャスター
日本のオブザーバー参加はやはりない?

川崎さん
まだ分かりませんよ。岸田総理は何も確定的なことは言っていませんので、そこはあきらめずに、広島から、全国から、少なくともオブザーバー参加をして議論に加わろうということを言っていく必要があると思います。

■核兵器禁止条約は「核兵器は許されない」という国際規範を高める

青山高治キャスター
核保有国が参加しない条約が機能するのかという声もあるが、この点はいかがですか?

川崎さん
実はですね、例えば地雷禁止条約とか、クラスター爆弾禁止条約でも同じような問題はありました。持っている国は、やはりなかなか手放さないし、条約に加わろうとしないんですね。しかし、条約ができて、多数の国が加わることで規範が強まる。兵器は持ってはいけないし、使ってはいけないということが、明確化していくということなんですね。条約で禁止された兵器であれば、兵器を企業が作ることや、そういう企業にお金を貸すくことはダメだという規範が広がるということが、地雷やクラスター爆弾のときもありました。つまり、持っている国は「うん」とは言えないけど、外堀を埋めるというか、圧力をかけるという効果があります。核兵器禁止条約でもその効果がじわじわと出てきていると言えると思います。

RCC

中根夕希キャスター
ICANとしては、この期間中どういうアクションを起こそうと考えているんですか?

川崎さん
ウクライナの危機が始まってから初めての国際的な核兵器についての議論する場です。とにかく核兵器はいけない兵器、間違った兵器だという声を上げるため、オーストリアのウイーンに多数で集まろうということで、締約国会議が開かれる前の6月18日(土)19日(日)に、数百人規模で世界から集まって、「市民社会フォーラム」を行おうと計画しています。そこには、広島、長崎の被爆者の人たちや、世界の核実験被害者の人たちにも集まっていただこうと。ただしコロナの問題があるので、みんなが世界から集まれるわけではないので、オンラインのやり取りもできるようにしようと準備中です。そしてICANのメンバーは政府の正式な会議の方にも、参加をして意見表明をしようとオーストリア政府と協議をしているところです。

RCC

青山キャスター
一般人の私たちが参加できる場面があったりするんですか?

川崎さん
少なくともオンラインで見ることはできるし、どういう議論を政府がしているかもわかるようになります。なんとか、広島の人、日本の人たちの声が届くような仕組みを作りたいと思っています。

小林キャスター)
重要な時期を前に実は川崎さんには、核兵器禁止条約について直接質問できる場があります。「朝からカッキン問答!」ということで、毎週木曜日の朝からyoutube配信しています。カッキンは核禁条約とバットにボールが「カッキン」と当たることを表現しているようですが

RCC

川崎さん
核共有の議論もありましたが「こういう時期だから核兵器が必要なんではないか」「核はなくせないのではないか」という議論が実は多い。そういうものに対して、ちゃんと打ち返すと。カッキンと遠くに打ち返すということで、対話形式でいろんな質問を出してもらおうということです。

小林キャスター
最後にみなさんに伝えたいことはありますか?

川崎さん
広島のみなさんは世界でとても重要な立場にあると思います。広島から選出された人がいま総理大臣、日本のリーダーですから。広島から核兵器禁止条約の締約国会議に出ましょうよ、という最後の一声をかけていただきたいと思います。

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