平成新山「落ち着いた状態」 関係機関が防災視察登山

山頂で直下型地震による溶岩ドーム崩壊への警戒を呼びかける清水名誉教授(右)=平成新山

 九州大地震火山観測研究センターと長崎県島原市は16日、雲仙・普賢岳の噴火活動で形成された溶岩ドーム「平成新山」(1483メートル)への防災視察登山を実施した。同大の清水洋名誉教授(65)は「火山活動は静かで、落ち着いた状態」との見解を示した。
 普賢岳の噴火は1990年11月17日から始まり、火口周辺では溶岩が堆積と崩壊を繰り返し、巨大な溶岩ドームを形成。43人が犠牲となった91年の大火砕流から6月3日で31年になる。
 視察登山は、溶岩ドームの現状を関係機関で共有しようと、毎年春と秋に実施。国土交通省や消防、警察、行政、報道関係者ら約70人が現状を確認した。
 参加者は入山規制している警戒区域内に入り、溶岩が不安定に堆積する山頂まで登った。同センター関係者が噴気温度を数カ所で計測。観測を始めた95年、700度以上あった山頂部は、昨年11月と同程度の約90度だった。
 清水名誉教授は、複数の場所で水蒸気が上がる山頂周辺の現状に触れ、「小規模な水蒸気爆発が起こる可能性はある。溶岩ドームは不安定で、大雨や直下型地震による崩壊には注意が必要」と警戒を呼びかけた。
 国交省長崎河川国道事務所の砂防課などによると、溶岩ドームは昨年12月現在、97年の計測開始から24年間で計約1.39メートル島原市側にずり下がった。警戒区域は、島原半島3市が溶岩ドームの東側を中心に計約950ヘクタールを設定している。


© 株式会社長崎新聞社