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田植えの季節となりました。田植えといえば、田植え機でイネの苗を植えますが、こちらは、「苗を植えない」田植えの様子です。そんなの、あり?!
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JA職員
「田植え機自体が要らなくなる。たぶん4割近くコストが落ちるんじゃないか」
農家は
「期待している」「これは究極の方法と思う」
きょうのテーマは、『ゴルフボールも使います! 植えない田植え 実験開始』。広島県内では初めてとなる試みです。
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苗を植えるのではなく、種をまくのです。イメージがわきにくいですが、「代かき同時播種」という技術です。トラクターが “代かき” をしながらイネの種をまいていくというものです。東北地方を中心に普及し始めていますが、広島県内では初めて、東広島市で始まりました。その目的は、多くの農家にとって赤字となっているコメ作りの改革です。
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広島・東広島市 西条町 郷曽地区の田んぼです。この日、始まった実証実験には主催するJA広島中央や地元の農家のほか、周辺からも農家が視察に訪れました。
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JA広島中央 河野孝行組合長
「田植え作業が不要になる。田植え機も必要なくなる。これを機会に多くの方に導入していただきたい」
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まず、トラクターの後ろにつけた種まき機にイネの種を入れます。種が赤茶色なのは殺菌剤などに漬けたからです。種は、JAの職員が自分で育てました。ふつうの田植えだと、苗を育てるのに1か月ほどかかりますが、7日ほどで切り上げます。
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JA広島中央 溝西優課長
「白いところが芽が出ている状態です」
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東北の先進地のマニュアルを参考に、職員が東広島の気候に合わせアレンジしました。
溝西優課長
「この辺、ちょっと気温が高いんで、これくらいでもう止めて、田んぼにまく」
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田んぼの状態は、ゴルフボールを田に落として調べます。
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JA広島中央 西田 聡課長
「ちょうどいいくらいです。あんまり沈むとやわらかすぎで、沈まないとかたすぎることになる」
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トラクターが田んぼに入りました。後ろにつけた種まき機から種をまきます。すぐに土をかぶせるので、わかりにくいのですが、まかれた種が落ちています。
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この実証実験は、去年、農家3軒で始めたものです。ことしは本格導入に向け、12軒に増やしました。田んぼを管理する集落法人の脇田理事長は、去年も実験に協力しました。結果がよかったことから、ことしは面積を5倍以上に増やしたということです。
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集落法人 郷曽 脇田茂行理事長
「米価が非常に安いのでコストダウンをしないと、法人も経営が難しい。期待しています」
JA広島中央 河野孝行組合長
「危機的な状態。こういったコストの削減を図らない限り、絶対に生き残れない」
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多くの農家にとってコメ作りは赤字です。東広島市の一般的な農家のコメ作りの経費と売り上げを比較したものです。国からの補助金でなんとか経営を維持しています。
実は、JA広島中央にとって「植えない田植え」は初めてではありません。
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4年前にはイネの種に鉄粉をまぶした鉄コーティング米をドローンでまく実験もしました。結果は?
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柴田和広記者 2018年
「びっしりイネが生えています。もう豊作というか、こんな田んぼ、見たことありません」
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イネの成長もよく、実用化されたものの、代かきと種まきの間に時間が空いて、雑草がよく生えるため、あまり普及しませんでした。
今回は、代かきと同時に種をまくため、雑草もあまり生えず、さらに一手間、省けます。
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農家
「究極の方法だと思う」
ファーム西田口 柏尾博明代表
「究極のコスト削減には、これが課題解決する大きな手法だと思う。大いに期待している」
しかし、課題もあるようです。
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郷曽 脇田茂行理事長
「欠点が1点ほどあるのは、スズメが拾うんです」
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大雨が降るなどして、種が土の上にむき出しになったときが危ないということです。実験に協力しているこの農家も去年、スズメの被害に遭いました。
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農業 大下博隆さん
「雨がちょっと強く降ったということもあって、少し種が表面に出ちゃったんでしょうね。スズメがどんどん集まり始めて、7割くらい食べられてしまった」
ことしはだいじょうぶなのでしょうか?
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JA広島中央 河野孝行組合長
「(田んぼに)水を張って、雨にたたかれないように対策を打つ。十分できるだろう」
「植えない田植え」の田んぼは無事、実りの秋を迎えられるのか、多くの関係者の目が注がれています。
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― 将来、ひょっとすると「田植え」という言葉がなくなって、「田まき」になるかも知れません。コメ作り農家にとっては肥料や農薬などの農業資材の値上がりもたいへんで、相当な危機感を持っています。今回の実験、技術的な課題は、ことしの結果を見ないとわかりませんが、コメ作りの形が変わっていきそうな予感も…。