「魚いないアクアリウム」設置 羽尾歯科医院春日山に クロスアーツ相馬さん制作 来院者の目を引く

 水生生物の飼育鑑賞設備(アクアリウム)の企画、メンテナンスを手掛けるクロスアーツプロジェクト(上越市)が、魚のいないアクアリウムを制作し羽尾歯科医院春日山(同市春日山町3)に設置、来院者の関心を引いている。
 代表の相馬久人さん(45)はレストランやクリニックで展示するアクアリウムを企画・制作。作庭の技法を取り入れた作品は各所で愛されている。
 しかし、2018年にオープンした上越市立水族博物館「うみがたり」で飼育されていたイルカが立て続けに死に、それを受けた市民の反応に戸惑いを感じた。「人間が一方的に恩恵を受けるような文化は、非難される対象になっていくだろうと(思った)」
 20年以上経営していたショップを閉め、理想のアクアリウム作りに没頭。親交のあった東京・恵比寿のユナイテッドパシフィックス(特注家具製造、住宅・店舗設計。タレント・所ジョージさんの『世田谷ベース』を手掛けた)代表、石川容平さんに声を掛け、作品づくりを始めた。新型コロナウイルスの感染拡大で対面の打ち合わせができず苦労したが、昨年11月に完成、同医院に設置を終えた。
 作品は木製の家具に水槽を収めたような形で、高さ168センチ、幅と奥行き58センチ。水槽には割れた卵のような石のオブジェが置いてある。石は大きなものを割って接着パテで接いだもの。表面に植物が生えている。「石は人間の活動量、植物は生態系の豊かさを表している」(相馬さん)

家具のような印象の作品。「水槽の中のオブジェは人間の活動量と生態系の豊かさを表す」と相馬さん

 同医院のスタッフによると、来院者の多くが作品に興味を示し、写真を撮影するという。「魚はいないんですか、と聞かれることが多い。魚のいる水槽は動画、いない水槽は写真を撮る人が多い」(スタッフ)
 相馬さんは今後も自身のコンセプトに忠実に、芸術性の高い作品づくりを進める。秋には同市内のレストランで個展を開く予定だ。

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