郷土への関心育む新拠点に 県立長崎図書館郷土資料センター3月開館

展示コーナーや閲覧席などがある閲覧室

 長崎市立山1丁目の旧県立長崎図書館(旧館)跡地に3月末、県立長崎図書館郷土資料センターが開館した。県立図書館の郷土資料部門として、本県関連の約19万冊を所蔵。一般書・児童書部門であるミライon図書館(大村市)の本の取り寄せや返却ができるサテライト機能も担う。明治時代に創設された県立長崎図書館の伝統を受け継ぎ、郷土への関心を育む新拠点として役割を果たしていくことが求められる。

◇「長崎の本」収集
 同センターは鉄筋コンクリート2階建て、延べ床面積約2130平方メートル。1階に開架の書棚や閲覧席、展示コーナーなどを備えた閲覧室、集会・研修室などがある。2階は閉架書庫。収蔵能力は37万冊(開架約3万冊、閉架約34万冊)。
 行政、観光、教育、産業、スポーツなど多分野の本県関連資料、長崎ゆかりの文学に関する資料(映像、音源などを含む)などを対象に収集、保管。書棚には県や県内自治体の刊行物から本県が舞台の小説まで、ありとあらゆる「長崎の本」が並んでいる。
 所蔵資料の貸し出し手続きはミライon図書館の利用カードが使え、持たない人は登録手続きをすればカードが入手できる。貸出期間は22日間。インターネットでミライon図書館の蔵書をリクエストし、受け取れるサービスも利用可能。

旧県立長崎図書館跡地に開館した県立長崎図書館郷土資料センター=長崎市

◇調査研究を支援
 カウンターで、本県郷土の調査・研究を支援する「調べもの案内(レファレンスサービス)」を実施。調べたいことや探したいことを申し出れば必要な資料・情報を探してくれる。電話やウェブサイトを通じた質問にも対応している。
 県公文書コーナーも閲覧室内に併設。県文書取扱規程に基づく保存期間を過ぎた県公文書の中で、歴史的・文化的価値があると県が判断した「歴史的文書」(現在1971冊)や、県が過去に作成した刊行物などの「行政資料」の閲覧を申し込むことができる。
 展示コーナーは「長崎ゆかりの文学資料」(約2200点)や、近現代の所蔵資料を展示。「長崎ゆかりの-」は、出身作家の作品や長崎が舞台の作品が対象。直筆原稿やサインといったものもある。近現代の資料は、島原鉄道創設者・植木元太郎の旧蔵資料(約2万6500点)、明治期末に設立された雲仙公園事務所の資料(約1100点)など。

県立長崎図書館の主な足跡

◇110年の歩み紹介
 県立長崎図書館の歩みを紹介する開館展示「長崎の郷土資料収集の軌跡」を6月26日まで開催中。同図書館は地域の古文書散逸を懸念した文化人らが1894(明治27)年に創設した「長崎文庫」が前身。1912(明治45)年の創立から今年で110周年となる。
 1915(大正4)年に現在地に移転後、県庁から江戸時代の奉行所文書や明治期の行政文書が移管され、長崎原爆による焼失を免れて現代まで伝わった。古賀十二郎(1879~1954年)らの郷土史家が資料収集を助け、長崎学の拠点ともなった。江戸時代の古文書などは2005年、隣接地に開館した長崎歴史文化博物館に移管された。
 展示のあいさつ文では「先人の思いを大切に、今後も郷土資料の収集・保存に努め」るとの決意が述べられている。同図書館郷土課の田川正明課長は「郷土に関心がある人の手ほどきや案内をする『入り口』として、役割を果たしたい」と話す。


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