夫の不倫で離婚を検討中の40歳会社員「自分と子どもの将来が不安で毎日眠れない」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、40歳、会社員の女性。現在離婚を検討中の相談者。5歳の子どもの今後の教育費や老後資金などを考えると、夜も眠れなくなるほど不安になるといいます。今後の見通しや注意点は? FPの氏家祥美氏がお答えします。


40歳会社員女性。5歳の子どもひとり。

最近、夫の不倫発覚から離婚を検討しており、今後の生活、子どもの教育費、自分の今後の人生が不安で毎日眠れない程悩んでいます。投資も可能な範囲で行っていきたいですが、なかなか踏み出せません。アドバイスを頂けたら幸いです。

月収は40万円(手取り)、もし離婚した場合も養育費などを考えるとこの程度となる見込みです。貯蓄(自分名義)は1,200万円。勤務先は公務員と同水準待遇で60歳定年、その後も再雇用は可能。退職金は2,000万円程度の見込み。

離婚すれば財産分与等で多少はもらえる見込みですがあまりそこをあてにせずに検討したいです。これから子どもの教育費等もかかるのでアドバイスをお願いします。

【相談者プロフィール】

・女性、40、会社員 ・夫、40歳、会社員 ・子ども:5歳

・同居家族について:夫(会社員)

・住居の形態:持ち家(マンション・東京都。自身名義で5年前に購入。返済期間35年、残債約1,800万円)

・毎月の世帯の手取り金額:40万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:130万円

・毎月の世帯の支出の目安:35万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:9万4,000円(マンション、うち管理費、修繕費3万5,000円)

・食費:6万円

・水道光熱費:1万5,000円

・教育費:3万3,000円

・保険料:8,000円(掛け捨て医療と積立)

・通信費:1万円

・交通費:9,000円

・交際費:2万円

・美容・医療費:2万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・つみたてNISA:3万円(昨年11月より)

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,200万円

・現在の負債総額:1,800万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

氏家:離婚を考えるようになり、眠れない日々を送っているのですね。離婚を決意するときには、相手への怒りや将来への不安で平静を保つのが困難だと思いますが、こうしてプロに相談という形をとって、将来の見通しを立てようとする姿、素晴らしいと思います。一緒に考えていきましょう。

自立していて堅実な人柄の相談者

まずは全体の状況から確認していきます。ご相談者さんは公務員と同等待遇の会社員として働いており、現在5歳のお子さんがいます。お住まいはご自身名義で5年前に購入済で、ローンはあと1,800万円残っています。住宅を購入されたということで頭金なども使ったと想像されますが、ご自身名義の貯蓄が1,200万円あります。経済的にも自立した女性であることがわかります。

今後の家計についても、財産分与はある程度期待できるもののあてにしないで見立てを立てたいということですね。自立していて堅実、現実的に物事を考えられるお人柄なのでしょう。

成年年齢が18歳に。親権終了後の学費も公正証書で取り決めを

お仕事もあり、お住まいもお持ちですから、基本的な暮らしはこれからも大きく変わることはありません。話し合い次第にはなりますが、離婚後は夫が家を出ていき、夫から子どもの養育費を受け取ってお子さんと生活をしていくことになるでしょう。

養育費についても話し合いで決めますが、一つの目安としては「養育費算定表」があります。裁判所のホームページで一般にも公開されているので参考にしてください。離婚時に取り決めをしても、後々養育費がうやむやになってしまうことも少なくありませんから、公証役場に出向いて、公正証書を作成しておくことをお勧めします。

なお、2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられました。親権は18歳で終了しますが、お子さんの大学進学などを予定している場合には、大学卒業までの教育費についてもしっかりと取り決めをしておきましょう。

家計状況の把握は使途不明金の把握から

家計の状況ですが、養育費も含めた離婚後の手取りは40万円。それに対して毎月の支出は35万円、貯蓄は3万円、つみたてNISAは3万円となっています。

ところが、ご記入いただいた支出の内訳を合計してみると26万9,000円(投資、貯蓄を除く)となっていて、毎月の支出35万円と、8万円以上の誤差が生じているのが気になります。

この8万円は使途不明金なのでしょうか。それとも現在の3人暮らしの支出が35万円で、内訳は離婚後のお子さんとの二人暮らしを想定した金額なのでしょうか。ちょっとわからないので、収入は40万円、支出は35万円という前提で考えていきたいと思います。

すでにご自身名義の貯蓄が1,200万円あるので、今後はつみたてNISA3万円を継続しつつ、残った2万円を貯蓄としていきましょう。

高校までの教育費はその時々の家計から

日常生活はひとまず問題がないので、続いて、人生の3大資金「教育費」「住居費」「老後資金」について考えていきましょう。

最初に、お子さんの教育費から考えます。下の【1年あたりの教育費】は、小学校から高校までの1年あたりの教育費を公立・私立に分けて示しています。数字の中には、学校教育費のほか、塾代や習い事代などの学校外活動費の全国平均値も含まれています。

【1年あたりの教育費】
公立:(小)32万円(中)49万円(高)46万円
私立:(小)160万円(中)141万円(高)97万円

ご覧の通り、公立と私立では教育費に大きな差があります。高校までは公立と考えるのであれば、高校3年生まではその時々の家計から教育費をねん出していくと考えましょう。

ただし、これだけの金額を新たに生み出す必要はありません。現在、毎月3万3,000円、年間にして39万6,000円を教育費として支出しているので、中学生となり教育費が年間49万円となったときでも今より年間10万円程度の負担増ということになります。

大学資金は積み立てで準備

一方、大学の学費は高額のため、その時の家計から出すのは困難です。今から準備をしておきましょう。学生生活調査によると、私立大学の学費は137.5万円×4年間=550万円です。この金額は文系理系を合わせた全国平均ですから、理系や芸術系への進学を考えるならもう少し多めに用意しておいた方がよいでしょう。

5歳のお子さんが高校3年生の秋までになるまでに貯めたいので、いまから12年間で4年分の学費550万円を貯めることになります。550万円を12で割ると、1年あたり46万円になります。現在ボーナスが130万円あり、このうち100万円を貯蓄に回しているので、そのうちの半分を教育費として貯めていくと大学入学までに550万円が貯められます。

住宅ローンの繰り上げ返済や老後資金準備は53歳から

お子さんの大学資金が52歳の時に用意できると、そのあとは住宅ローンの返済や老後資金準備に余剰資金をあてられるようになります。高校までは毎月の家計から教育費を出しつつ、ボーナスの半分を大学資金として貯めていくのですが、それがどちらも終わるので家計に余裕が生まれます。

現在の貯蓄が1,200万円、将来の退職金が2,000万円、さらに53歳からは60歳までの8年間ではボーナスが毎年100万円ずつ貯められるとするとここでも800万円が貯まります。ここまでの合計で4,000万円になります。このほか、毎月の貯蓄やつみたてNISAも退職まで継続できるので実際の貯蓄はもっと多くなるでしょう。

ボーナス50万円を調整資金として活用して

暮らしの中には、イレギュラーな支出がつきものです。シングルマザーとして仕事と子育てを両立していく中では誰かの助けを借りたいこともあるでしょう。お子さんの教育費が想定以上にかかることも将来的にはあるかもしれません。そのような時には、ボーナスの50万円(ボーナス収入130万円-ボーナス支出30万円-大学資金準備50万円=50万円)を調整資金として活用しましょう。必要な時に多少お金を使っても、心身に負担をかけすぎずに元気に働き続けることが、親子の幸せにつながります。

責任感の強いしっかり者のご相談者さんです。お子さんのためにも、きちんと話し合いをして養育費を確保し、前を向いて歩んでくださいね。

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