キャッシュレス決済が増えて使いすぎも増えた50代夫婦。FPが勧める管理のコツは?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、キャッシュレス決済が増えてから、ついお金を使い過ぎてしまうという50代の夫婦。上手な管理方法や、使い過ぎを防ぐ対策は? FPの秋山芳生氏がお答えします。


電子マネー、クレジット払いが多くなり、現金でお金の動きが見えないせいで、つい使い過ぎてしまいます。何か管理のコツなどがあるのでしょうか。

私はパートで月手取り22万円。会社員の夫(月手取り18万円・ボーナス130万円)、と高校1年の未子と同居しています。

【相談者プロフィール】

・女性、51歳、パート ・夫:52歳、会社員 ・末子:15歳(高一)

・その他子ども3人(29歳・24歳・24歳)は独立

・住居の形態:持ち家(マンション・九州地方)

・毎月の世帯の手取り金額:40万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:130万円

・毎月の世帯の支出の目安:33万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万円

・食費:6万円

・水道光熱費:3万円

・教育費:1万円

・保険料:3万円

・通信費:5万円

・お小遣い:6万円

・その他:2万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:5万5,000円

・現在の貯蓄総額:540万円

・現在の投資総額:60万円

・現在の負債総額:1,000万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

秋山:ご質問いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼 FP YouTuberの秋山芳生です。クレジットカード払いや電子マネー払いで支出が多くなってしまった方からの相談ですね。キャッシュレス決済が急速に進む中で、キャッシュレスでのお金の管理方法を学ばないでいると支出は多くなりがちです。現金と違い、お金を使っている実感が湧きづらいからです。

今回は、キャッシュレスについて考えると共に、どのように管理するのがよいかを一緒に考えていきたいと思います。

当たり前になりつつあるキャッシュレス決済

そもそも、世界中でキャッシュレスが当たり前になる中、日本は普及が遅れていると言われていました。現金で決済しても、それほど問題がない(現金を持ち歩いても危険がない。偽札が少ないなど)という日本の治安の良さも普及を遅らせる原因だったようです。しかし、東京オリンピックで世界中から来日する人のクレジットカードによる決済期待から決済端末の導入も進み、コロナ禍で現金のやり取りが不衛生であるという機運から一気にキャッシュレス決済が進みました。

インフキュリオンによる「決済動向2021年12月調査」によれば、クレジットカードの利用率は78%、FeliCa型電子マネー(※)は58%、QRコード決済は56%となっています。ここ数年でキャッシュレス決済は当たり前になりつつあります。

※ソニーが開発した非接触型ICカードの技術方式

キャッシュレスのメリット・デメリット

キャッシュレス決済のメリットは、「お財布を開いてお金を数え、お釣りをもらう」という一連の動作が不要なため素早く決済できることにあります。また、タッチ決済であれば店員とのカードの受け渡しもなく、衛生的です。

一方で、キャッシュレスでは「お金を使っている」という実感が湧きにくいため、ついつい使いすぎてしまう場合があります。現金のほうが使っている実感が湧くために節約思考になり、貯蓄しやすいと言っている人も多くいます。しかし、実際の管理方法を学べばキャッシュレスのほうが支出をコントロールしやすくなります。キャッシュレスの最大のメリットは電子決済により利用履歴が「見える化」されることだからです。「何に、いくら、いつ、使ったのか」がわかれば、支出の傾向もわかり、対策が打ちやすくなります。

キャッシュレス管理は家計簿アプリが相性よし

キャッシュレスを管理する為には、家計簿アプリを活用するとよいでしょう。クレジットカードや銀行などの金融機関を連携することで、利用履歴を手間なく集計できるようになり、慣れれば手書きの家計簿よりも圧倒的に支出が把握しやすくなります。残念ながら、QRコード決済の支出をダイレクトに把握できるアプリは少ないようですが、QRコード決済へのチャージ金額を特定の費目(食費など)に決めておけば、間接的に何に使っているかを把握できます。

支出管理ならデビッドカード

ほかにも、使うクレジットカードをひとつに絞るなどの方法もありますが、使いすぎてしまう人の場合、支出管理をするためにデビッドカードを使うのも手です。デビッドカードは「銀行の口座にある以上使えなくする」ことで使いすぎを防ぐことができます。使っていい予算だけを口座に入れるようにしましょう。

家計簿アプリの登録だけではNG

家計簿アプリを使えば、支出の記録を自動で集計してくれるので、圧倒的に管理がしやすくなります。ただし、「家計の自動集計」は非常に便利な反面、「確認し見直す」ということをしなければただの数字であり、活用できていないデータが溜まっていくだけになりかねません。家計簿アプリを活用したら、自動集計だけに頼らず、家計を振り返り、自分の支出傾向の把握や改善点を洗い出す時間を設けましょう。

「変動費」は一週間単位で予算を決めるのがオススメ

家計をコントロールするには、家計を「変動費」と「固定費」に分けて仕分けすると改善しやすくなります。とくに、食費や交際費、日用品、趣味などの変動費は、1週間単位で予算を決めてコントロールすることで改善しやすくなります。

とくにキャッシュレスでおすすめなのが、プリペイドカードです。毎週定曜日に一定額をチャージして、その中で1週間の予算を決めて使えば支出と残額をコントロールしやすくなります。

もし1週間の内に予算をオーバーする使い方をした場合は、翌週のチャージ金額を減らすことで調整していきます。1カ月単位で支出予算をコントロールしようとすると、どうしても給料日直後に利用額が多くなり、月末になると緊縮財政になる傾向があります。1週間でコントロールし、翌週でリカバリーする癖をつけると、結果的に1カ月全体の予算コントロールがしやすくなると思います。

固定費の見直しは基本

ご相談に合わせて、キャッシュレスでの変動費のお金の管理方法を中心にお答えしましたが、家計全体を見渡すと、固定費の支出が多くなっています。特に保険3万円と通信費の5万円は非常に高いので見直しするとよいでしょう。

家計簿アプリで何にいくら使っているのかを把握して、高すぎる支出を見直すのは変動費も固定費も一緒です。キャッシュレスで生活ができているのであれば、キャッシュレスの最大のメリットである支出の自動把握と見直しをして、問題を改善していくとよいでしょう。毎月払うことが当たり前になっている支出こそ、見直せば大きな改善につながりやすいものです。どこか参考になれば幸いです。

© 株式会社マネーフォワード