招請せず

 こんな経験はないだろうか。「このクラスは遅刻者が多過ぎる」と朝のホームルームで時間通りに登校している生徒にカミナリが落ちたり、「最近は集まりがよくないですな」と会長さんの不満顔でPTAや自治会の会合が始まったり…▲カミナリの落ちるべき先は平気で遅刻してくる生徒だし、不満顔は欠席者にこそ向けられるべきだろう。その言葉を真に伝えるべき肝心の相手がその場所にいない▲少し似てるかも、という思いつきは適切なのかどうか、と首をひねりながら書いている。長崎市は8月9日の原爆の日に開く平和祈念式典に今年、ロシアとベラルーシの駐日大使を招かないことを決めた▲今、どこの国よりも先に被爆地に足を運ばせ、非戦と非核の叫びを聞かせなければならない相手。それは他でもない、大国の責任をかなぐり捨て、国際秩序を平然と踏みにじっているロシアである▲ロシア大使らが臨席するとウクライナ侵攻に対する抗議活動など「不測の事態」も想定され、式典の厳粛な進行が妨げられる恐れがある-と長崎市長。無理からぬ選択と言うほかないのだが▲それでも思う。ナガサキはあなたたちの国を諦めないし、あなたたちにつながる回路やドアを閉ざしはしない。そんなメッセージの出し方はなかったか。今、だからこそ。(智)

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