独身、結婚、介護。人生の節目で確認したい節税方法

毎月あるいは将来の収入を計算する上で所得税や住民税の負担は気になるところ。これらの税金については控除制度を活用して節税することも可能です。所得の合計から差し引くことで課税所得金額(課税対象となる所得金額)を減らせる「所得控除」の種類はたくさんあります。ライフステージごとに活用しておきたい控除を中心に取り上げます。


独身でもできる節税とは

控除というと家族がいる人を対象としたものとイメージしていませんか? 独身でも受けられる控除はいくつかあり、そのひとつが「社会保険料控除」です。例えば以下に該当する方は、所得控除を受けられる可能性があります。

・学生時代に国民年金保険料の納付猶予(学生納付特例制度)を受けていた方
・会社を退職後の失業中に国民年金保険料の免除を受けていた方

これらの猶予、免除を受けた国民年金保険料は10年以内であれば、後から納めることができます。

就業により収入に余裕が生まれ、上記の猶予や免除を受けていた国民年金保険料を追納した場合、払った保険料分の全額が控除の対象となります。その結果、課税所得金額が減り、所得税と住民税の節税につながります。社会保険料控除の対象となるのは、現在毎月負担している社会保険料だけではありません。

なお、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入した場合の掛金や、独立・起業して小規模事業者が加入できる小規模企業共済制度の掛金について、「小規模企業共済等掛金控除」もあります。若い人でも、独身の人でも、以上のような「将来への備え」に係る制度で全額控除が可能となります。

結婚後の控除はその特徴の理解が重要

結婚すると、上記以外にも「配偶者控除」や「配偶者特別控除」が受けられることがあります。

「配偶者控除」は、納税者である本人と生計を一にする配偶者の年間所得が48万円以下であることなどが条件で、かつ、納税者本人の年間所得が900万円以下であれば、控除額は所得税38万円、住民税33万円となります。配偶者が70歳以上になると所得税48万円、住民税38万円となります。本人の所得が900万円を超えると段階的に控除額が少なくなり、1000万円を超えると控除を受けられません。

もし、配偶者の年間所得が48万円を超えていて配偶者控除を受けられなくても、配偶者の所得が133万円以下であれば「配偶者特別控除」を受けられます。控除額は本人の所得や配偶者の所得によって変わってきます(所得税は1万円~38万円、住民税は1万円~33万円)。結婚してからは毎年、自身がいずれの控除をいくら受けられるか確認することが大切です。なお、近年事実婚が増えていますが、事実婚の場合は控除対象になりません。

扶養親族の対象は16歳以上

配偶者以外に、年間所得が48万円以下の、生計を一にしている親族(6親等内の血族や3親等内の姻族)などがいると、「扶養控除」が受けられることがあります。16歳以上の親族が控除対象扶養親族となり、所得税が38万円、住民税が33万円の控除を受けることができます。19歳以上23歳未満の親族については特定扶養親族として所得税が63万円、住民税が45万円の控除を受けられます(年齢はいずれもその年の12月31日時点での年齢)。

つまり、結婚後に子どもがいても、16歳になる前の子どもは控除の対象になりません。所得の少ない高校生以上の子がいれば扶養親族、大学生の子がいれば特定扶養親族として節税ができるようになると言えます。

親の介護で控除されることも

親を扶養親族とすることもあるでしょう。70歳(その年の12月31日時点での年齢)以上の扶養親族については老人扶養親族となり、同居老親等であれば所得税58万円、住民税45万円、それ以外であれば所得税48万円、住民税38万円の扶養控除を受けられます。

自身の50代以降、親の介護に直面することもあるでしょう。もし、高齢の親を介護している場合は、扶養控除だけではありません。親(65歳以上)が介護を受けていると、市町村の認定によって「障害者控除」を受けることができます。この場合、親が障害者手帳等の交付を受けていなくても控除が受けられることになります。

介護保険制度の要介護認定(「要介護」1~5、「要支援」1~2)を受けただけでは必ずしも税制上の障害者控除の対象になるわけではありません。ただ、「要介護」と認定されていることで障害者控除の対象とされることも多く、一部の市町村では「要介護」だけでなく、「要支援」でも障害者控除が認められることもあります。扶養控除だけではなく、障害者控除を受けられるか、確認してみましょう。

介護による障害者控除についての控除額は所得税が27万円、住民税が26万円です。その状態が重い場合には特別障害者として控除額も多くなり、所得税は40万円、住民税は30万円の控除になります。また、同居特別障害者に該当する場合であれば、それぞれ75万円、53万円の控除となります。

年末調整や確定申告で忘れずに控除を

会社に勤めている場合は、一部の控除(寄付金控除、医療費控除、雑損控除)を除き、年末調整で控除を受けられます。また、税務署へ確定申告することで全ての控除を受けることができます。

こういった手続きをすることで所得税や住民税が軽減されますので、忘れないことが大切です。

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