「新しい長崎県」とは 大石知事就任3カ月 人口減少対策、重要課題を語る

「全世代が安心・安全に暮らせる社会を目指す」と話す大石知事=県庁

 2月の長崎県知事選で初当選した大石賢吾知事が就任して3カ月がたった。6日開会の定例県議会には、初めて公約を盛り込んだ本年度一般会計補正予算案を提出する。長崎県の将来像、人口減少対策、重要課題への取り組みについてインタビューした。

 -「新しい長崎県をつくる」と3月の所信表明で述べているが、どのような将来像を描いているのか。

 長崎県は離島、半島、山間地が多く、社会インフラのコストが高い。そうした状況の下、人口減少や少子高齢化が進み、若い人たちは県外に流出し、(地域によっては)社会機能の維持が困難になっている。
 若者になぜ長崎を出るのかと尋ねると、「(仕事に限らず)やりたいことにチャレンジできるところがない」と。それらは首都圏や大阪、福岡など都市部に集中していると思うが、県内でもチャレンジできるものをつくる必要がある。
 例えば医療は、地域に一定の(人口の)ボリュームがあればビジネスとして維持できる需要があったかもしれないが、(離島などでは)それが小さくなり困難になっている。現行法では初診からすべて遠隔で診ることはできないが、受診のため島を出るのではなく遠隔医療で完結できるよう、国家戦略特区で規制を緩和できないかと考えている。そうすることで島民の安全・安心な暮らしを守っていきたい。新しいことや面白いことに取り組み、他県の人が挑戦に行きたいと思う「選ばれる長崎県」にしたい。

 -女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」について、子育て支援策の強化などで「2」を目指すとしている。人口維持には「2.07」が必要とされるが、長崎県は2021年、「1.60」(概数)だった。これは子育て支援策が不十分だからか。

 まず「2」を目指すのは、2015年の県の調査で県内の女性が希望する出生率が「2.08」だったから。子どもを産みたい人が産める環境をつくりたい。
 現状が「1.60」にとどまっているのは、子育て支援策だけに原因があるのではない。出産するかどうかの判断は教育費を含む経済的な問題、仕事との兼ね合いなどさまざまな事情がある。私が掲げている出産育児一時金増額などが実現できれば、出産を考えている人たちの一助になるだろう。子どもの医療費助成の18歳までの拡充は市町に強制するのではなく、しっかり擦り合わせをした上で慎重に進めたい。
 ただ合計特殊出生率は、女性(15~49歳)が県外に流出して人数が減少しても、県内に残った女性が子どもを多く産めば高くなる。単に高ければ良いのではなく、県内の女性の人口が増えて出生数も増えるのがベスト。長崎県は若い女性が非常に多く県外に流出しているのが課題だ。

知事選立候補の動機となった「公助のあり方を変えたい」という思いは「変わっていない」と話す大石知事=県庁

 -出生率が低いのは、晩婚化や非婚化などライフスタイルの変化の影響も大きいと思う。加えて長崎県は20代前半の女性の県外流出が目立つ。女性が働きやすい職場づくりの支援や、そうした職場が県内にあることのPRにもっと力を入れるべきではないか。

 女性活躍を意識しているのでそこには力を入れたい。確かに晩婚化や非婚化という現状もあるので子育て支援の環境を整えるだけで(出生率の問題が)解決するものではない。婚姻率が高くなれば出産の確率も高くなるので、婚活も支援している。包括的に取り組まなければならない。

 -日本全体で人口が減少している。当面は一定の人口減少を前提にし、社会、経済活動の担い手を確保しながら、持続可能な地域社会を目指すべきでは。

 その通りだと思う。今の(少子高齢化の)人口構造を見ると、(出生数が死亡数より少ない)自然減という意味では人口は減少するだろう。適正な人口規模の判断は難しいが、希望する人が出産でき、地域社会を維持できる環境をつくりたい。その上で(県内転入者数が県外転出者数を上回る)社会増となり、全体の人口が増加すればうれしい。

 -東彼川棚町に計画している石木ダム建設事業について、反対住民の意思は固い。どのように理解を求めていくのか。

 これまでの経緯は承知しているが、しっかり住民の考えを聞くことが第一歩。(1975年の事業採択から)長くなり心苦しく思う。できるだけ早くそういう場を設けたい。一方で事業推進を求める人たちの意見を聞く機会もつくりたい。

 -ハウステンボス(佐世保市)への誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)について資金調達先を公表していない。年間売り上げ約2716億円や年間来訪者約673万人の計画が過剰という指摘もある。

 資金調達先はできるだけ早く公表できる部分は公表したい。売り上げや来訪者数は国や県の統計データ、シンクタンクの調査結果など客観的な数値を基に、海外IRの類似事例も参考にしながら、IR事業者やコンサルタント会社とともに推計した。それだけのポテンシャルを持っているのは間違いない。九州全体の気運醸成を図り、国の区域認定を受けられるよう全力で取り組みたい。


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