目線を右上に

 人は未来のことを想像したり仮説を立てたりするときは右上を、過去を振り返るときには左下を見る傾向があるのだという。本紙で以前、医学ジャーナリストが心理研究の一つの例として紹介していた▲「右肩上がりの伸び」というように、物価でも株価でも、変化を折れ線グラフや棒グラフで表すときは、左が過去で、右になるほど新しくなる。無意識のうちに私たちは時間を左から右に流れるものと考えているらしい▲コロナ禍の前は実に3千万を超える外国人が日本を訪れていた。観光業や旅行業に関わる人はこの2年ほど、海外から人の波が絶えなかった黄金期を、左下に目線を落としながら思い起こすことが多かったかもしれない▲伏し目がちの人の目線はやがて右上に向くのかどうか。スイスの研究機関、世界経済フォーラムが先ごろ発表した「観光魅力度ランキング」で日本が初めて首位に立った。コロナ前の1位はスペイン、日本は4位だった▲国際航空便が増え、交通機関も使いやすい-と、交通インフラが整っていて、観光資源が豊富な上に治安もいい。評価は上々らしい。外国人観光客の受け入れが、少数ではあるが近く再開される。追い風になりますよう▲小欄の黒い三角を右肩上がりにしてみた。左下から右上へ、ささやかな回復祈願として。(徹)

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