「20代のうちに結婚し、子どもは3人欲しい」25歳会社員女性。ベストな資産運用計画は?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、25歳、会社員の女性。20代のうちに結婚し、子どもは2、3人欲しいと考える相談者。そのために資産運用に取り組んでいますが、このままでいいのかプロの意見が聞きたいそうです。FPの秋山芳生氏がお答えします。


現在社会人4年目、20代のうちに結婚したいのと、将来子どもを2〜3人希望しています。現時点のベストな資産運用についてアドバイスが欲しいです。

つみたてNISAは満額実施(月3万3,000円)、また持株会で積み立て(月2万2,000円、給与天引き)、残った余剰資金はある程度貯まったら米国ETFを購入しています。

また、もうすぐ企業年金制度がDBからDCに変わる予定です。iDeCoが気になっていますが、マッチング拠出の方が節税効果が高いでしょうか。運用成績に依存すると思いますが、どちらのほうがおすすめか、あるいはどちらもやらないという選択肢もあると思います。ご意見を伺いたいです。

また、いま契約している保険が本当に必要かもアドバイスいただきたいです。

【相談者プロフィール】

・女性、25歳、会社員、独身

・住居の形態:賃貸(東海地方、同居家族なし)

・毎月の世帯の手取り金額:19万5,000円

・年間の世帯の手取りボーナス額:90万円

・毎月の世帯の支出の目安:15万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:0円(家賃8万5,000円ですが、給与天引きのため)

・食費:2万5,000円

・水道光熱費:1万円

・教育費:1万5,000円(英会話、書籍購入等)

・保険料:1万8,000円(貯蓄型ドル建終身保険1万3,000円程度、残りは医療保険とガン保険)

・通信費:6,000円(スマホ、放送視聴料)

・その他:交際費 3万、服・美容 2万5,000円、日用品 1万、歯科矯正 8,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0円(給与振込時は貯金しても、じきに投資に回す)

・ボーナスからの年間貯蓄額:70万円

・現在の貯蓄総額:120万円(100万円を目安にしており、超えた分は投資用と考えています)

・現在の投資総額:340万円(つみたてNISA含む投信130万円、自社株140万円、米国ETF70万円)

・現在の負債総額:0円

秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼 FP YouTuberの秋山芳生です。今回の相談者様は、25歳の社会人4年目の女性です。全体的に支出が少なく、貯蓄や資産形成もしっかりできています。

余剰資金を運用するにあたり、つみたてNISA、会社の持株会、iDeCo/企業型確定拠出年金、特定口座でのETF購入などさまざまな手段があるので、ライフプランを見据えた上で、どのようにしていくのがよいかを一緒に考えていきたいと思います。

まずは家計チェックから 家賃天引きのメリット・デメリット

まず家計全体を見ていきましょう。手取り月収は19万5,000円ですが、家賃8万5,000円
が既に天引きされているようです。最近では福利厚生として社宅を導入することで、給与から家賃分を引き、手取り収入や標準報酬月額を下げているケースがあります。標準報酬月額が下がると、社会保険料が下がり会社の負担も減ります。また所得も下がるので所得税や住民税も下がり、個人の負担も減る場合があります。

普通に家賃を払うよりは手取り収入が増えるのでよいことだらけに見えますが、将来の年金額も少なくなります。その分をしっかりと貯蓄したり運用して自分で備える意識を高めておくとよいですね。相談者様の場合は、老後に向けた資産家性もしっかり考えているので問題ないでしょう。

生活支出全体をみても、節制されており無駄が少ない家計です。交際費や衣服美容にかかるお金はある程度高いですが、今しか経験ができないこともありますし、収入に対して過剰な金額ではないと思います。

唯一考え直したほうがよいのが保険

ただ、唯一考え直した方がよいのが「保険」ですね。

貯蓄型のドル建て終身保険に1万3,000円と、医療保険・がん保険に5,000円加入していますが、私はどちらも不要だと思います。

ドル建て終身保険は、その実態は「手数料の高い投資信託」と「保障の薄い保険」の抱き合わせ商品です。また「予定利率や積立利率が3%」などと提示されることが多いですが、この予定利率や積立利率は、支払っている保険料の全額にかかるわけではなく、「保険会社が決めた一定の割合のみがこの利率で回った場合」という、極めて不透明なものになります。実態は支払っている保険料の1/5以下しか3%で運用されていないこともよくあるのです。

つい銀行預金の金利と比べてしまい、保険の利回りが高いと感じてしまいますが、注意する必要がありますね。また、長期にわたって資産拘束を受けるので、使い勝手が悪い金融商品でもあります。同じく長期で積み立てるのであれば、手数料の安い投資信託のほうが有利ですし、保障が必要になれば、効率的な保険に入ったほうがよいでしょう。

医療保険は不要?

また、医療保険も、資産を460万円以上持っているので、私は不要と考えます。公的保険で医療費は3割負担ですし、高額療養費制度もあります。医療費は支払い額が限定されており、不足分も十分に資産から支払えますね。また、医療保険やがん保険は「入院したら」「手術をうけたら」「抗がん剤を使ったら」「放射線治療をしたら」など、保険がおりる条件が決まっています。

将来医療が進化し、「通院しながら投薬で治す」「自宅で治療し自宅で休む」などという世界観になったら全く保険がおりないこともあり得ます。病気になることは怖いので、無防備でいようということではなく、既に公的保険に加入しているということを理解し、将来の備えは現金や資産でフレキシブルに対応していきましょう。

未来がどうなるかわからないからこそ、「用途を限定されず、どのようにでも対応できる」状態を作ることが重要だと思います。

資産運用について【つみたてNISAと持株について】

さて、それでは、ご質問にあった資産運用についても、個別に考えていきたいと思います。

◆つみたてNISA
つみたてNISAは、毎月の余剰資金から積み立てているので全く問題ありません。運用益に対して税金が優遇されることや、長期投資に適していることからもプライオリティとして最初にくる投資手法だと思います。

◆会社の持株会
会社の持株会は、それほどお勧めではありません。個別株のボラティリティ(価格変動の度合い)が高い上に、一社に集中投資をすることになるからです。会社が傾けば給料も下がり株価も下がる事になるので、労働を会社に投資し給料をもらい、その給与からさらに自社株に投資するのは集中投資しすぎているかもしれません。

もちろん、会社の優遇で5%や10%安く株を買えるようであれば、単元株(※)になった時点で売却して優遇分を利益に変えるということであれば問題ありません。また、今後上場を目指しており大きく値上がりする可能性にかけるのであれば、それは大きなチャレンジとして、万が一上場できない場合でも大丈夫な範囲で投資することを心がけてください。

(※)通常の株式取引で売買される売買単位のこと

資産運用について【iDeCo/企業型確定拠出年金(DC)】

◆iDeCo/企業型確定拠出年金(DC)
確定拠出年金には、個人型(iDeCo)と企業型があります。どちらも掛金が所得控除の対象になるので、所得税や住民税が安くすみます。個人型のほうは、自分で証券会社を選ぶことで手数料が安く実績のよい投資信託を選べます。企業型の場合は、会社が選定した投資信託の中から選ぶことしかできないので、手数料が高い投資信託が混ざっていたり、元本保障型ばかりが選ばれていたりするなど、注意が必要になります。

一方で、個人型確定拠出年金は加入時に2,829円(税込)の手数料に加え、毎月171円の手数料が発生します。また、金融機関によっても異なりますが、口座管理料として月々0円から500円まで費用が発生する可能性があります。企業型確定拠出年金は、この手数料を企業が負担してくれるので、個人の負担は小さくなります。

よって、投資信託のラインナップがよければ企業型確定拠出年金を選び、微妙な場合は個人型を選択するとよいでしょう。また、2022年10月には制度変更があり、企業型確定拠出年金の制度がある会社でも、個人型確定拠出年金を選択しやすくなります。無理に企業型に縛られなくなるので、状況を判断して選択すればよいと思います。

iDeCo/企業型確定拠出年金(DC)で注意すること

一方で、確定拠出年金は60歳まで引き出せないデメリットもあります。今後結婚し、子どもを3人産むとすると、一定期間働けなくなる可能性もあります。その際でも、確定拠出年金は原則的には拠出を止められず、最低月5,000円の拠出を続ける必要があります。

現在は収支がコントロールできているので確定拠出年金に拠出することは問題ないと思いますが、お子さん3人を育てながら安定的に拠出できるかどうかは、まだ見えない部分もあります。税制優遇が受けられる非常に有利な制度とはいえ、特に急ぐ必要はないと思いますので、ご結婚し、お子さんが生まれて、その時の働き方に合わせて確定拠出年金を利用するかを考えても問題ないでしょう。

支出を固定化しすぎず、フレキシブルな対応を

VUCA(ブーカ※)と言われる時代の中で、今後のライフイベントも可変的だと思います。プランがまだ固まりきっていない中で支出が固定化されすぎると、人生の自由度を損ねてしまう可能性があります。もちろん、家計に余裕がある中で、税制優遇制度の企業型確定拠出年金やiDeCoを利用するのがいけないわけではありません。ただし「焦る必要はない」と思いますので、将来の見通しが立ってから開始してもよのではないでしょうか。

どこか参考になれば幸いです。

※Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語。社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のこと。

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