ETFと投資信託、手数料が安いのはどっち?中抜きではない「意味がある手数料」とは

経済アナリストの馬渕磨理子です。

資産形成を考える上で、「投資信託」や「ETF」といったワードを耳にすることがあると思います。私もそれぞれの違いについて質問を受けることがありますが、皆さんにとっても参考にしていただけると思いますので、紹介します。


一歩先の投資、「投資信託とETF」の違いは

私は自身の動画番組で、若い世代の方からの質問に毎週答えていますが、最近、NISAやiDeCoの非課税枠を使い切ったので、次は、自分でもう少し考えながら投資や資産形成と向き合いたいと思っている方が増えてきています。そうした方から寄せられる質問で多いものが「投資信託とETFって何がどう違うの?」です。

結論はETFも投資信託の一種です。何が違うかは「上場している」か「上場していない」かの違いで、投資信託の中で上場しているものがETFと呼ばれています。ETFは「Exchange Traded Funds」の略でExchange(取引所で)、 Traded(取引される)、 Funds(投資信託)です。

ポイントは、ETFも投資信託の一種ですので、「運用をプロにお任せする点」は共通しています。異なるのは、手数料、価格の決まり方、売買のタイミング、どこで買うのかで、ここで両者の差がでます。今回は、一番重要な手数料について確認していきましょう。

手数料が安いのは投資信託とETFのどちら

「投資信託って手数料が高いって聞くけど本当ですか?」とよく聞かれます。ここで、手数料の考え方についても紹介します。購入する時にかかる「購入手数料」、売却する時の「売却手数料」、保有(運用)している期間中の手数料は「信託報酬」と呼ばれます。注意して見る必要があるのは「信託報酬が何%か」だけで良いです。

信託報酬はほかの手数料と異なり、投資家の口座や売買代金などから直接手数料が引かれるわけではありません。運用されているETF・投資信託の中から「純資産総額に対して何%」といった形で毎日差し引かれます。つまり、ETF・投資信託の純資産から毎日、日割りの信託報酬が引かれています。長期の資産形成を考える場合、この信託報酬を押さえることがポイントになります。

信託報酬は年率0.0~2.6%程度の幅がありますが、一般的に投資信託は「0.5〜2.5%程度」、ETFは「0.25%程度」が平均的ですので、投資信託よりETFの方が安いと言われています。資産形成を考えた場合、まずは信託報酬の手数料を押さえるところからスタートします。ただし、何でもかんでも手数料が低ければいいという考え方を、私はしていません。値段には「付加価値」が付いているケースも多々あります。

例えば、投資信託の中でプロのファンドマネージャーが投資商品を選定・運用するものは「アクティブファンド」と言われます。例えば、投資先の企業選定のために業界分析を行い、数100社の企業訪問や企業取材をした上で投資先の決定を行うケースがあります。この場合、調査コストがかかります。単純に日経平均と同じ程度のパフォーマンスを目指す「インデックスファンド」とは違って、調査コストをかけて高パフォーマンスを目指すのが「アクティブファンド」です。

一例として、毎月3万円の積立を4%の利回りで20年間運用した場合の信託報酬の差を比べてみると、信託報酬2%で運用した場合は「197万円の支払い」、0.5%で運用した場合は「53万円の支払い」、0.25%で運用した場合は「27万円の支払い」です。2%と0.25% で比較すると20年間で170万円分多く信託報酬を支払うことになります。ただし、アクティブファンドの場合は7%の利回りを目指すものもありますので、信託報酬を多く支払ってもそれを上回るリターンを得られる場合もありますので、しっかりと信託報酬の「%」と投資信託がどのような方針で運用されているのかを確認しましょう。

単なる中抜き的な手数料には意味がありませんが、アナリストやファンドチームの調査が手数料に入っている場合は当然、付加価値があると思います。私自身、金融業界に身を置いて10年目ですが、企業訪問や調査は体力、精神ともに、かなりの労力を使います。表に出ていない情報を得るためには、企業取材が欠かせません。

信託報酬が高い投資信託を見た時に、その投資信託がどんな性質のものか一度確認してみてください。一般的な日経平均やS&P500といった指数よりも高パフォーマンスを目指しているファンドかもしれません。

参考までに、投資信託の統計図を紹介します。ここまでお話してきたように、投資信託にはインデックスファンド、アクティブファンドがあります。そしてアクティブファンドにはテーマ性(DX、脱炭素、ESG、AI)などのテーマを絞ったものと、全くテーマとは関係なくファンドが厳選するものに分かれます。

手数料の考え方を知り、投資信託の中にも種類があることを知ることで「自分で意思を持ち」投資対象を決めることができると思います。一歩先の投資の始まりです。

20世紀最大の発明の1つ「ETF」

ここまで、投資信託と投資信託の一種であるETFについて確認してきましたが、その中でもETFは20世紀最大の発明の1つだと言われています。

ETFの起源は1990年にカナダのトロント証券取引所で上場された「TIPS35」が世界初のETFと評することが一般的です。その後、1993年にアメリカン証券取引所に上場されたS&P500に連動する「SPDR S&P500 ETF Trust(Ticker:SPY)」の登場によって、ETFが本格的にスタートしました。S&P500のETFは日本でも人気で保有している方も多いですし、私も長期保有しています。ちなみに日本初のETFは約25年前、1995年に上場した「日経300株価指数連動型上場投資信託」です。

ETFの登場以前は、投資は富裕層のためのものでしたが、ETFの登場によって投資の民主化が進みました。ETFの特徴をまとめると、以下の5つになります。

1. 少額から投資可能
2. 多数の銘柄に分散投資することが可能
3. 指数への連動を目指して運用されるため透明性が高い
4. 費用が安い
5. 取引所の立会時間中に売買可能

発明ポイントは、多様な資産からリスクを押さえながら、取引所で取り引きができ、費用が安い点です。投資信託と違って、ETFはマーケットが開いている時間帯に自由に売買できますし、価格も変動します。投資信託の価格が決まるのは1日1回です。つまり、株式と投資信託の特徴を持った金融商品と言えます。

コストを押さえながら、自由に売買できる個人投資家の視点で作られたものがETFです。ぜひ、皆さんも20世紀最大の発明の1つETFの恩恵を受けてみてください。

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