五島に巡回診療車「モバイルクリニック」 県内自治体で初導入、移動困難な患者訪問

モバイルクリニックのイメージ図

 長崎県五島市は本年度、慢性疾患を抱え移動が困難な高齢患者らの利便性向上のため、オンライン診療の機能や医療機器を搭載した専用の巡回車両(モバイルクリニック)を導入する。患者宅などを訪れ、病院や診療所にいる主治医が診察するモバイルクリニック事業は県内自治体で初めて。
 国の「デジタル田園都市国家構想」の交付金などを活用する。6日の市議会臨時会で、車両や医療器具の購入費など事業費5300万円を盛り込んだ本年度一般会計補正予算案を可決した。
 市と県によると、市内の65歳以上の高齢化率は41.29%(5月末)。一方、人口10万人当たりの五島医療圏の医師数は県平均を下回る。高齢化や医師不足とともに、交通弱者への対応が課題となっている。

専用車両内でのオンライン診療の様子(長野県伊那市提供)

 市や長崎大、市内の医療機関、県などが連携。主に慢性疾患を抱える人を対象に、オンライン診療の了承を得た上で、医療機関が専用の運行システムに予約。診療用のモニターや心電図検査、エコー検査などの機器を載せた車両を市の委託を受けた事業者が運行し、患者宅などに向かう。看護師が同乗しサポートする。
 薬剤師もオンラインで結び、服薬指導を行えるようにする。薬は患者への配送などを検討する。県外では、長野県伊那市が2020年6月から全国で初めて同事業を実施している。
 五島市福祉保健部は「通院が難しい患者らの重篤化を防ぎたい。医師の往診回数の軽減など効率的な医療提供ができるよう態勢を整える」としている。


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