1億5000万円を貯めた「貧乏性」の49歳女性が50歳FIREを前に気にしていること

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、49歳、会社員の女性。友人と経営する会社をたたみ、50歳でFIRE予定の相談者。現在の資産は1億5,000万円以上。完全FIREにあたって、いくつか不安があるそうですが…。FPの伊藤亮太氏がお答えします。


現在49歳、女性、独身、子どもなし。東京近郊で一人暮らし。現在資産は、合計1億5,000万円〜1億6,000万円(時価変動で上下)。FIREを検討中です。50歳完全リタイアで100歳までの資金計画を考えていますが、いくつか不安があり、ご相談させていただければと思います。

仕事は、友人と小さな会社をやっていますが現在徐々に仕事を減らし、来年頃に解散しようか…と考えています。会社に借金はありませんが、自転車操業なので退職金等もありません。仕事は自宅で行なっています。

基本的に一人ではあまり贅沢はせず、友人との会食や旅行、長く使うモノ(家電やカバン・コート等)は少し奮発する傾向です。ただ、根が貧乏性なので、今も毎日ポイ活したり、買い物も最安値チェックの日々です。かといってお金は使うためにあるわけですし、ただひたすら溜め込むのもばからしいと思っています。

現在の住まいは親族所有のもので、管理人代わりに住んでいますが、医療面や交際面も考え、60歳前後で都心の交通の便のよいマンションへの引っ越し想定をしています。

リタイア後は、語学や絵を習ったり、世界一周旅行にも行きたいです。老後資金に余裕が持てそうであれば、色々とやりたい事はあるのですが、リタイア後の日々の暮らしに、どの程度までお金を使ってよいものか…と。独身ですし、不慮の事態も考慮しつつ、事前にしっかり予算組しておきたいと考えています。

つきましては、以下の5点についてアドバイスをいただければと思います。

1)退職後の社会保険料等について

50歳でリタイアした場合、今後の「社会保険料(年金、健保)」「住民税」などの支出はどれくらいの額を見込んでいればよいでしょうか?

2)リタイア後の資産配分について

できればリタイア後も取り崩し等せず、配当のみで暮らせることが理想ですが、リタイア後の資産配分としては、全体にリスク資産が重すぎるでしょうか?

3)年間支出の目安について

自分の試算では、100歳まで資産を保つことは可能かな…と考えているのですが、いかがでしょうか?

4)保険について

そろそろ見直しをしたいと思っています。現在入っている保険は以下の3つです。

(a)「個人年金保険」年24万円

(b)「生命保険&医療保険」年13万円

(c)「介護保険」年103万円(×10回で払込満了。現在300万円払済)

5)60歳頃からの住居について

60歳前後に都内のマンション購入を考えています。5,000万前後で一括購入を想定していますが、80歳前後からは高齢者住宅への入居も検討が必要と思っています。そうなると、むしろ賃貸等の方がよかったりするでしょうか?

以上です。とても長くなってしまいました。すみません…。アドバイスいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

※編集部注:相談文・詳細は割愛させていただきました。

【相談者プロフィール】

・女性、49歳、会社員 ・住居の形態:持ち家(東京都・戸建て)

・毎月の世帯の手取り金額:30万円(給与+配当を月割計算年間合計380万円(給料180万円、配当200万円)

・毎月の世帯の支出の目安:15万円(生活費のみ)

・毎月の支出の目安:15万円

【毎月の支出の内訳】

・家賃:なし(固定資産税や火災保険、改修費等は負担)

・食費:3万円

・水道光熱費:1万円

・通信・サブスク費:1万2,000円

・交通費(電車・ガソリン):2万5,000円

・交際費:1万5,000円

・生活雑貨:3,000円

・スポーツジム:1万円

・趣味:2万円

・医療費:5,000円

・衣服・美容:8,000円

・書籍・映画・展覧会等:1万2,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:4万3,000円(個人年金保険2万円、iDeCo 2万3,000円)

・現在の貯金総額(投資分は含まない):2,800万円

・現在の投資総額:1億4,000万円

・現在の負債総額:0円

【投資資産内訳】

・国内株:8,500〜9,000万円(配当利率平均2.8%、30%が優待目的、30%が応援したい企業、40%が高配当)

・米国株&米国ETF:2,300〜2,600万円(配当利率平均1.5%、20%が個別株、80%が ETF:S&P500;、先進国、新興国 等)

・国内の投資信託:1,500万円強 (米国成長系株、米国債券、国際成長系)

・円定期預金(利率0.15%前後):2,200万円

・外貨定期預金(利率1.5%前後):600万円

伊藤:ファイナンシャル・プランナーの伊藤亮太です。回答させていただきます。まず、ご質問者さまの資産状況からみるに、このまま運用して配当金を得つつFIREするという構図になっているかと思います。これまでのように株価が上昇する時期にあればよいですが、必ずしも今後はそうなる保証はありません。その点をご理解いただきつつ、本当にFIREするかどうかをご検討ください。FIREではなく、いったん休業して数年間満喫されてから仕事に復帰するのもありだと思います。何かしていないと暇すぎるのもどうかと個人的には思います。以下に1)〜5)の質問に対する回答を行います。

1)退職後の社会保険料等について

社会保険料は、基本的に収入に応じて支払う形式です。しかしながら、リタイアすれば収入は減ることになります。仮に国民年金第1号被保険者になるのであれば、国民年金保険料は定額です。令和4年度で月額1万6,590円です。ここから先は物価の変動分での保険料額の変動はあり得ますが、月額で数千円増加するなど大きく増加することは短期的にはないのではないでしょうか。住民税も所得に応じて変わってきますので、減少する可能性が高いです。

なお、リタイアした1年目は、前年の所得に応じて住民税がかかりますので注意してください。年間50万円程度におさまるのではないでしょうか。60歳以降は年金保険料の支払いはなくなりますので、さらに減少します。50年間同額で見積もる必要はないかと思います。

2)リタイア後の資産配分について

できるだけ保守的な運用を心がけるべきだと考えます。現状の収入見込みですと、このまま運用を継続することを前提にされていますよね(少しは減らす方向でお考えだと思います)。今後10年間の間に仮に大きく上昇する時期がありましたら、そこで売却してその後の生活資金として利用していくことを検討されてはいかがでしょうか。まだ49歳ですから時間はありますので、例えば65歳までの間に大きく上昇する機会があればそこでいったん半分なり売却し、その後のある程度の生活資金にしていくといった形がよいかなと思います。

できればリスクを抑えていくため、株式中心ではなく外債などでの運用へシフトしていくのが望ましいかなと思います。配当収入が減っても、この場合には値上がり益でカバーできると思います。

3)年間支出の目安について

100歳まで同じだけの資金は使えないと思います。使えるのは70代か80代ぐらいまででしょう。毎年どれくらいの生活費にするかは、その時々の経済情勢で変更していけばよいと思います。運用が順調なときは売却した分からまかなっていくことができます。あくまで私の意見ですが、使えるときに使ったほうがよいと思いますので、むしろ希望される金額ぐらいをまずは1年使ってみてください。そして、それでも資金面で不自由なくいけそうと思われたら継続して利用していけばよいです。

これだけの資産がおありでしたら、よっぽど変な使い方をしない限り100歳までは資産はもちます。ただし、病気などのリスクが年齢に伴い高まっていきますので、そちらの資金準備はしっかりしておくべきですね。

4)保険について

a)「個人年金保険」年24万円→このまま継続でOKです。

b)「生命保険&医療保険」年13万円→もったいない、解約したいというお気持ちが強いように感じます。現預金もありますから、解約でもよろしいでしょう。

c)「介護保険」年103万円(×10回で払込満了。現在300万円払済)→いまや高齢者の5~6人に1人は介護サービスを利用する時代です。独身ですし、頼る先がないのであれば、このまま払い続けいざというときに利用する手段があってもよいと思います。すくなくとも72歳までは継続し、解約返戻金が支払った金額を上回るようになった時に検討されればよいでしょう。

5)60歳頃からの住居について

健康に自信があるかどうか、高齢者施設へ入ることも考えて行動するのかどうかにかかっています。今の資金額から言えば、賃貸でもよいかと考えます。相続させたい方がいるといった場合は別ですが、相続税対策なども考慮する必要がないのであれば、住みたい家に住むのが一番です。正直10年後の不動産価格はどうなっているかまったく予想がつきません。そのため、購入する方向で検討しつつ、そのときの状況で決めればよいでしょう。

現状は借り入れもなく大変健全な状況です。少しずつリスクを軽減させるため、投資部分を減らしていき、65歳ぐらいには株式の比率を引下げ、外債等での運用により金利収入と為替差益を狙っていかれたほうがよいかと思います。一度FIREし、半年に一回ぐらい見直しをしつつ、やりたいことを楽しまれてはいかがでしょうか?

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