年収300万円台20代夫婦「二人目が欲しいけど厳しいでしょうか?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、妻27歳、夫23歳のご夫婦。現在2歳のお子さんがいる相談者夫婦。年収は、会社員の夫とパートの妻合わせて300万円台。現在は貯金もできていますが、もし二人目が生まれたら家計状況はどうなるでしょうか? FPの宮里惠子氏がお答えします。


年収300万円台。子ども2人は難しいでしょうか?

現在、夫(23歳)、私(27歳)、子ども(2歳)の3人暮らしをしています。夫は社会人2年目、私はパート勤務、子どもは3歳から幼稚園入園予定です。夫の手取り月収は家賃・保険天引きで16〜20万円と、残業の有無により上下します。今後昇給の可能性はあるそうですが、何年先のことかはわかりません。退職金等も不明です。私は交通費込み8万円ほどですが、パート先の都合により子どもが幼稚園に入るタイミングで辞める予定です。

生活費に関して、米や野菜など実家から貰うことも多く、食費は抑えられているのですが、車を新規に購入し夫婦で2台所有することになったため、また、今後ネット回線を契約するため支出が増える予定です。生活費は毎月現金にて前取りしており、残った分は貯蓄へ回す予定です。毎月の貯蓄は、家族口座に5万円、子ども口座に2万円と子ども手当て1万5,000円を貯めています。ボーナスは夫のお小遣いとして15%、残りは貯金に回す予定です。現在貯蓄額は、車購入の際に前金として一部減ってしまい家族口座に50万円、子どもの口座に150万円です。

今後いつかはマイホームが欲しいと思っていますが、現在はまだ明確に時期などは考えてはいません。投資に関しては、興味があるのですが現在貯蓄も少なく不安なため行っていません。親は皆健康で、介護は10年以上先のことと考えています。もし介護が必要となった時は出来る限り関わる予定です。自分たちの老後は、まだはっきりと考えていませんが、子どもに頼らずに生活できるようにしていきたいと思っています。

子どもへの教育に関して、小学校中学校は公立、高校大学は子どもが希望するのであれば私立へ行かせたいと考えています。習い事等は、まだ小さいのでさせていませんが、今後希望があればなるべく叶えたいと思っています。夫婦共々もう1人子どもが欲しいと思っているのですが、この家計の状況で第一子の子どもの教育費が間に合うのか、第二子にも第一子と同じような教育をさせてあげられるのか、まだ先のことですが老後子どもに面倒をかけてしまうのではないか不安で今回相談しました。よろしくお願いいたします。

【相談者プロフィール】

・女性、27歳、専業主婦 ・夫:23歳、会社員 ・子ども:2歳

・住居の形態:賃貸(関東地方)

・毎月の世帯の手取り金額:25〜30万円(夫16〜25万、残業により変動。家賃天引き済み。私8万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:夫50万円、妻なし

・毎月の世帯の支出の目安:15万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:2万円(夫給料天引き)

・食費:2万5,000円(米の仕送りあり)

・水道光熱費:2万円(ガス電気1、水道1)

教育費:1万円

・保険料:1万5,000円(夫給料天引き)

・通信費:1万円(夫婦のスマホ2台分)

・車両費:4万円(新車ローンとして2万含)

・お小遣い:3万円(夫2妻1)

・その他:2万円(日用品、レジャー)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:7万円+子ども手当1万5,000円

・ボーナスからの年間貯蓄額:30万円

・現在の貯蓄総額:200万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:100万円(新車ローン)

宮里:家計を拝見いたしました。お子さんをもう一人ほしいけれど、現在の家計状況で可能かどうか心配とのことです。ご夫婦ともお若いですが、将来を見据えてしっかり考えようという姿勢が大変立派です。

現在の貯蓄率は30%以上。努力の賜物

まず、現在の家計状況を見てみましょう。いただいた相談内容の毎月の支出明細から年間の支出を計算すると、186万円(家賃、保険料の給料天引分を除く)。貯蓄額は、114万円(子ども手当分を除く)です。

世帯の手取り額は月によって変動があるようですが、仮に手取り年収を350万円とすると、収入に対する貯蓄率は30%以上です。さらに、子ども手当を全額貯蓄に回し、お子さんのためにすでに150万円もの貯蓄をされているとのこと、本当にがんばっていらっしゃるなあと感じます。

妻がパートを辞めるとほとんど貯金ができなくなりそう

ただ、今後はお子さんが幼稚園に入るタイミングで妻であるご相談者が仕事を辞める予定ですので、90万円程度世帯年収が下がります。さらに、幼稚園にかかる費用とインターネット回線の費用が増える予定ですね。

幼稚園、保育所に関しては「幼児教育・保育の無償化制度」が実施されています。幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3歳から5歳までの全ての子どもの利用料が無償化されていますが、通園送迎費・食材料費・行事費などは保護者の負担です。

習い事などを含め、お子さんにかかる費用を仮に現在より月額1万円をプラスし、インターネット回線の費用が月額6,000円程度とすると年間19万2,000円の支出が増える計算です。

現在年間114万円も貯蓄をしているご相談者の家計であっても、単純にそれらを差し引くと今後はほとんど貯蓄ができない状況になります。

お子さんの成長に伴い、食費や衣料費、習い事など支出が増えることはあっても減ることはないでしょう。また家族がいつも健康とは限りません。突発的な支出があるとすぐに家計が赤字になり、せっかくの貯蓄を取り崩すことになってしまいます。

これからかかる教育費の心配は

ご相談者はお子さんの進路や習い事に関して、お子さんの希望を叶えたいとのお気持ちです。これからかかってくる子育て費用について考えてみましょう。

幼稚園、保育所に関しては「幼児教育・保育の無償化制度」が実施されていますが、「平成30年度子供の学習費調査」(文部科学省)によると、公立小学校で年間約32万円、公立中学校が年間約49万円かかるという結果です。

ただし、小学校・中学校は義務教育期間なので、すべての子どもには教育を受ける権利が保障されています。就学援助制度の援助対象の家庭は学用品費や給食費、修学旅行費等の援助を受けられる国の仕組みがあります。

高等学校については、すでに公立高校は授業料の実質無償化が実施されており、2020年度からは年収制限はありますが、私立高校も授業料の支援額が引き上げられました。

大学についても2020年度から「高等教育の修学支援新制度」によって、授業料の減免や給付型奨学金の拡充が始まっています。

国の施策によって、家庭の経済状況に関わらず、子どもが進学できるチャンスを確保できるよう、授業料等の教育にかかる基本的な費用の負担は減免されつつあるといえます。

とはいえ、習い事や塾に一切通わないというのは現実的ではありませんね。お子さんの希望をかなえるためにも家計の安定は欠かせません。

2人目の子どものタイミングは?

ご夫婦は2人目のお子さんをご希望されていますので、タイミングを考えてみましょう。

兄弟姉妹の年齢差が小さければ、子ども同士一緒に遊べたり、衣類やおもちゃを共有できたり、メリットはたくさんあります。ただ、教育費など子どもに関する費用は、同時期に高額な出費がかかります。

兄弟姉妹に年齢差があると、上のお子さんが下のお子さんの面倒を見てくれたりして、育児に余裕ができますね。一方で教育費などの子どもに関する費用は、一度にはかかりませんが、長い期間かかり続けます。

兄弟姉妹の年齢差の良し悪しを簡単に判断することはできません。しかしながら、ご相談者の今後の家計を考えると、今すぐ2人目のお子さんを授かったとしたら、毎月の家計状況はかなり厳しくなると言わざるを得ません。

では、上のお子さんが小学校入学のころ(今から4年後)に2人目のお子さんが生まれるというプランではどうでしょうか。

そのころには、車のローンの支払いが終了すると思われます。夫の収入が順調に上がっていれば、家計が安定する頃ではないでしょうか。

いずれの場合でも、家族みんなが健康に気を使い、困ったときには、ご夫婦のご両親にお手伝いを頼んだり、金銭的な援助を受けられたりできるのかどうか、ご夫婦とご両親とよく話し合う必要があります。妻であるご相談者がいずれ仕事に復帰する見通しがあれば、さらに安心です。

家計の安定には妻の就労とご夫婦の若さが鍵

ご相談者は現在パートタイムで働いています。今2歳のお子さんが、保育所に通っているのかまでは相談情報から読み取れません。お子さんが3歳から幼稚園に通うことは決定事項なのでしょうか。

もしも、お子さんが3歳以降保育所に通うことができて、ご相談者が仕事を続けられれば、現在の貯蓄ペースが少し下がったとしてもこれまで通り安定した家計を維持できるでしょう。

今回は住宅購入や投資については触れませんが、ご相談者が継続して就労できるのであれば充分検討できると思います。

ご相談者ご夫婦の最大の強みは、お2人とも若いということです。2人目のお子さんができたとして、そのお子さんが大学を卒業してもご夫婦ともまだ50歳代前半です。老後資金の準備はそれからでも間に合います。

これまで将来のためにしっかり貯蓄してきたご夫婦です。まずは家計の安定を目指し、子育てを楽しみながら2人目のお子さんのタイミングを見極めてください。

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