ネットの誹謗中傷、歯止めに期待 「侮辱罪」厳罰化で栃木県内被害者

インターネット上の誹謗中傷対策で「侮辱罪」が厳罰化される

 インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策で「侮辱罪」を厳罰化した改正刑法が13日に成立したことを受け、過去に中傷を受けた栃木県内の被害者からは「厳罰化は必要」と肯定的に受け止める声が上がった。当事者の一人は心ない言葉の暴力に「社会は厳しく向き合うべきだ」と強調し、今後の歯止めとなることに期待を寄せた。

 「悪質な中傷が野放しにされるのは許されない。どれほど傷つくか、被害者の立場になって分かった」

 宇都宮市内の認可外保育施設「といず」で2014年、宿泊保育中の山口愛美利(やまぐちえみり)ちゃん=当時9カ月=が死亡した事件で、まな娘を失った母親(44)は厳罰化を必要と受け止める。

 「どうせ金目当ての裁判だろう」「親が悪い」

 ネットニュースのコメント欄や事件の情報を求めて立ち上げたホームページで、悪質な書き込みやうその情報が相次いだ。子どもを亡くした家族らを支援する組織の関係者からは「心を病むから見ない方がいい」と言われた。しかし、「何か事件に関する情報があるかもしれない」と目を凝らし、ショックを受けた。

 「一部の人だけが書き込んでいると分かっていてもつらいですよ。被害者をさらに追い込むような言葉に社会は厳しく向き合うべきだ」と訴える。

 宇都宮市のインターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁(くらもちじん)院長は「匿名でありもしないデマや中傷を繰り返す人がいる現状はあまりにひどい」と憤る。

 医師として、交流サイト(SNS)などで新型コロナウイルス下の医療の現状を発信し、時には政府の施策を厳しく批判した。ツイッターのフォロワーは14万人以上。投稿に多くの共感が寄せられる一方、一部では侮蔑や暴言、脅迫めいた言葉を書き込まれたことも。法改正を「嫌な思いをする人が少しでも守られるよう、安全網として必要なことだ」と評価した。

 情報通信技術(ICT)教育に詳しい宇都宮大共同教育学部の川島芳昭(かわしまよしあき)教授は「インターネット上の中傷に対して取り締まりが十分ではなかった」とみる。厳罰化に加え教育の重要性にも言及。「誹謗中傷を防ぐためにどうするべきか、問題を自分事として捉えて考える力を養うべきだ」と訴えた。

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