選択

 今の時季なら「傘を持って出るかどうか」か。いや、その前に「外出するかどうか」に一考の余地がある日もありそうだ。少し先の横断歩道、この青信号で渡れるか、次まで待とうか。生活の中で「選択」と「決断」は切れ目なく続く▲国語辞典によると、何かを「選ぶ」ことは〈条件を備える最も好ましいものとして、幾つかの中から取り出す〉ことだ。「選ぶ」ことは、他の選択肢をすべて「選ばない」と決めることでもある。雨の日の傘や横断歩道のように、答えがすぐに判明するものばかりとは限らない。だから時々難しい▲「正しい選択なんてこの世にない」-。作家の朝井リョウさんが小説の中で登場人物に語らせている。なるほど、選ぶ時点でどちらか正しい方が明白に分かっていたら、そもそも選択自体が生じない▲作家の言葉は続く。「何かを選んで選んで選び続けて、一個ずつ正しかった選択にしていくしかないんだよ」。その“正しさ”は選択の先のあなたにかかっているのだ-と語りかける筆致が熱い▲本県のサッカーJ2、V・ファーレン長崎が成績不振を理由に監督の解任を決めた。リーグ戦は半ば。戸惑いや疑問の声も広がっている▲重く厳しい決断をチームは“正しかった選択”にできるだろうか。この先の戦いがその答えになる。(智)

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