今の生活、維持?

 夕方、長崎市の浦上川沿いを歩いていると、ランニング中の人たちと擦れ違う。近頃はその姿にいくらか変化がうかがえる。たいていマスクを着けていない▲少し前まで、息苦しいはずなのに着用する人が大半だった。ああ、そうか、と思い当たる。国は先月、ランニングなど人と離れてする運動を「マスク不要」とした。それに伴う変化だろう▲徒歩通勤といった「屋外で会話がほとんどない場面」も「不要」に当てはまるが、マスクなしで道行く人は今もほとんど見かけない。熱中症が心配されるこの先はさて、ランナーに倣う人が増えるのかどうか▲マスクの例のように、これから少しずつ、コロナ前の日常を取り戻すのだろう…と考えていたが、人々の思いは必ずしもそうではないらしい。博報堂生活総合研究所の4月の調査では、コロナ禍の後も「今の生活を維持したい」層は6割に上り、昨年よりも増えている▲最も多い理由は「コロナに限らず感染症が不安」。以下「自分の時間を充実させられる」「人とあまり会わない生活が快適」…▲感染対策と自宅での充実した時間が、生活に浸透したのがよく分かる。「コロナ前のように」と「コロナの時のように」。この二つを社会に、生活に、うまく生かすこと。遠からず、私たちの新しい宿題になるのだろう。(徹)

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