「応援の力」実感する大会に 長崎県高総体 総評

バックスタンドを全校応援の生徒が埋めたラグビー決勝の長崎北陽台-長崎北。仲間たちに見守られながら、選手たちは全力を尽くした=長崎市総合運動公園かきどまり陸上競技場

 第74回長崎県高校総合体育大会は10日に6月開催分の全日程を終えた。3年ぶりに総合開会式を決行し、制限は残るものの全競技を有観客でやり遂げた。県高体連によると、今のところ大きな混乱もなく、コロナ禍における総合体育大会の「成功モデル」を提示した意義ある大会となった。

□客席に活気
 3日に総合開会式を行い、4~10日に計31競技を実施。一般客は引き続き試合会場に入れなかったが、保護者や一般生徒らの観戦が認められた。事前の健康管理を必須とし、時間帯に応じて入場者を入れ替えたり、選手とそれ以外の導線を分けたり、声を出す応援を控えるなど感染対策を工夫。この結果、選手は「頑張っている姿を一番見てもらいたい人たち」に見守られながら、集大成の試合に臨むことができた。
 バスケットボールやバレーボールの決勝で風物詩となっている全校応援も復活。手に汗握る接戦に思わず声が出てしまう場面も見られたが、県高総体の醍醐味(だいごみ)を多くの人が味わい、有観客を歓迎する声が多数上がった。
 入学以来、ずっとコロナ禍に翻弄(ほんろう)され続けてきた今の3年生は、大声援の中で試合をした経験がほとんどない。ラグビー決勝で初めて全校応援の中で試合をした長崎北陽台の白丸智乃祐主将は「みんなすごく緊張していたけれど、すごく力になった」と興奮気味に振り返った。テニス会場に通い続けた保護者は「最後の最後に、子どもが頑張る姿をようやく見られて幸せだった」と心から感謝していた。
 やるか、やめるかの2択ではなく、どうすればできるのかを考え、実行したコロナ禍3年目の今大会。この貴重な経験を来年の県高総体だけではなく、今後さまざまな機会に生かしていくことが望まれる。

□実力が拮抗
 各競技の団体、総合優勝校がつかんだ優勝旗は計55本。29校の手に渡り、このうち長崎日大、長崎工、瓊浦が最多4本を勝ち取った。
 長崎工はバスケットボール男子とフェンシング女子の初優勝が大きかった。大会を通じても初優勝はこの二つのみ。昨年はハンドボール男子で初優勝を遂げており、スポーツに理解がある学校、部活強豪校として存在感を高めている。瓊浦はバドミントン男子と空手男女が前評判通りの強さを見せたのに加えてボクシング勢が健闘。長崎日大は陸上女子で26年ぶりの頂点に立ち、ハンドボール男子と柔道男子はどちらに転ぶか分からない接戦を制した。
 ハンドボール男子、バレーボール女子、柔道男子、剣道などは例年、熾烈(しれつ)な優勝争いが繰り広げられているが、今年は他にも僅差の勝負が多かったのが大きな特徴と言える。
 テニス男子は初優勝を狙った長崎東が、22連覇中の海星をあと一歩まで追い詰め、相撲は25連覇中の諫早農に長崎鶴洋が大将戦まで粘った。バスケットボール男子の長崎工、レスリングの島原工、ソフトテニス女子の大村などは土壇場からの逆転V。連覇は全体の6割強にとどまり、複数競技で各校の実力が拮抗(きっこう)している現状がうかがえた。
 7月開幕のインターハイも有観客で行われる予定。代表校には、あと一歩で涙をのんだチームや選手の思いを受け継ぎ、そして熱い応援を受けながら全力を尽くしてもらいたい。

団体、総合上位入賞校

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