国民年金保険料を納めていない…どうすればいい?未納、免除、猶予の場合の違いは?

国民年金は20歳から60歳までの40年間(480カ月)加入し、毎月国民年金保険料を支払う義務があります。しかし、何らかの理由で「国民年金保険料を納めていない」場合、将来国民年金は受け取れないのでしょうか。

今回は、国民年金を受け取る条件や老後の年金額の違い、国民年金保険料の未納、免除、猶予の違い、そして国民年金保険料を納めていない場合の対応について、解説します。


国民年金保険料を納めていないと、年金額はどうなる?

日本の公的年金には、20歳から60歳までのすべての方が加入する国民年金と、会社員や公務員が加入する厚生年金の2つがあります。

国民年金保険料の支払いは「義務」です。とはいえ、国民年金保険料を自分で支払う必要があるのは国民年金の第1号被保険者(自営業・フリーランス・学生・無職の人など)のみです。第2号被保険者(会社員・公務員)の国民年金保険料は、給与から天引きされる厚生年金保険料の中に含まれています。また、第3号被保険者(会社員や公務員に扶養されている配偶者)の保険料は、第2号被保険者が負担するので、かかりません。

したがって、「国民年金保険料を納めていない問題」が発生するのは、第1号被保険者です。

年間の支払い額や受給資格のある期間は?

国民年金保険料は毎年変動します。2022年度(令和4年度)は月1万6,590円。年間およそ20万円支払う必要があります。

将来、年金を受け取るためには、年金を受け取るのに必要な加入期間(受給資格期間)が一定以上あることが必要です。国民年金の受給資格期間は10年(120カ月)です。つまり、国民年金保険料を10年納めていない場合は、そもそも国民年金を受け取ることができません。ちなみに、かつては25年(300カ月)でしたが、2017年に10年に短縮されました。

国民年金の年金額は「77万7,800円×保険料納付済み月数÷480カ月(40年)」で計算します。「77万7,800円」は、2022年度(令和4年度)の国民年金の満額で、毎年改定されます。40年分の国民年金保険料を支払っていれば、国民年金を満額もらえます。しかし、保険料納付済み月数が480か月に満たない場合、その分もらえる年金額が減ってしまいます。

もし1年支払ってない場合はどのくらい減る?

たとえば、国民年金保険料を支払っていない期間が1年(12カ月)ある場合の年金額は
77万7,800円×468か月÷480か月=75万8,355円
です。満額で受給したときに比べて年1万9,445円、月1,620円少なくなります。

国民年金保険料を10年しか納めていない場合は
77万7,800円×120か月÷480か月=19万4,450円
となってしまいます。

国民年金の受給金額の平均(月額)は5万6,252円(男子5万9,040円・女子5万4,112円)です。

国民年金の受給金額(2020年度)

厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和2年度)より(株)Money&You作成

令和2年度(2020年度)の国民年金の満額(月額)は6万5,141円だったということもあり、男女とも「6~7万円」がもっとも多いのですが、満額に満たない「6万円以下」の方も相応にいることがわかります。言い換えれば、何らかの理由で国民年金保険料を納めていない期間のある人は、意外と多いのです。

国民年金保険料には「免除」「納付猶予」の制度も

国民年金保険料は、自営業やフリーランスといった第1号被保険者はもちろん、リストラなどで仕事を失った場合でも納める必要があります。

国民年金保険料の支払いが厳しいときには、申請することで「免除」や「納付猶予」を受けることができます。以下、主な免除・納付猶予の制度を紹介します。

【免除】

保険料免除制度

収入が減ったり失業したりして、国民年金保険料の支払いが難しいときに、保険料が全額免除もしくは一部免除になる制度です。免除される金額は、「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」の4種類があります。

全額免除・一部免除によって保険料が免除された期間は、将来受け取れる老齢基礎年金の受給資格期間に含まれます。しかし、免除された金額に応じて、受給できる年金額は減ってしまいます。

・全額免除の場合:本来の年金額の8分の4
・4分の3免除の場合:本来の年金額の8分の5
・半額免除の場合:本来の年金額8分の6
・4分の1免除の場合:本来の年金額の8分の7

免除がある場合の国民年金の受給額の計算式は、次のとおりです。

日本年金機構のウェブサイトより

たとえば、5年間(60か月)にわたって全額免除の期間がある方の場合、
77万7,800円×(420カ月+(60カ月×4/8))÷480=72万9,187円
と計算できます。

産前産後期間の免除制度

第1号被保険者が出産したしたとき、出産日または出産予定日の前月から4ヶ月間の国民年金保険料が免除になります。多胎妊娠だった場合は、出産予定日または出産日の3カ月前から6カ月間にわたって国民年金保険料が免除になります。産前産後期間の免除制度は、保険料を納めたものとして取り扱われるので、本来の国民年金保険料を支払った場合と比べて年金額が減らないメリットがあります。

【猶予】

国民年金保険料の納付猶予制度

本人または配偶者の前年度の所得が一定額以下の場合に保険料の支払いが猶予される制度。20歳から50歳未満の人が申請できます。50歳以上の方の場合、納付猶予制度は利用できません。納付猶予を受けた期間は国民年金の受給資格期間としてカウントされますが、年金額は増えません。

学生納付特例制度

国民年金に加入するのは20歳からですが、20歳だとまだ学生で支払いが難しい場合もあるでしょう。こんなときに申請することで、保険料の納付が猶予される制度を学生納付特例制度といいます。こちらも、納付猶予を受けた期間は国民年金の受給資格期間としてカウントされますが、年金額は増えません。

一方、免除や納付猶予の申請をせず、国民年金保険料を納めないことを未納といいます。未納期間は国民年金の受給資格期間にもカウントされないばかりか、次に紹介する追納でも不利になってしまいます。

国民年金は追納・任意加入で増やせる

国民年金保険料の免除・納付猶予・未納があると、将来の国民年金(老齢基礎年金)の年金額が減ってしまいます。しかし、国民年金保険料を後から納める追納をすることで、この減少を回避できます。免除・納付猶予を受けていれば過去10年以内の保険料を追納可能。未納の場合は、過去2年以内の保険料しか追納できません。免除や猶予を受けたとしても、すべて追納すれば、本来の満額の年金を受け取れます。ただし、3年以上前の国民年金保険料を納める場合は所定の加算額が上乗せされますので、できれば2年以内に追納しましょう。

国民年金保険料の1カ月あたりの追納額と加算額(2023年3月末まで)

(株)Money&You作成

また、過去10年(または2年)より前の国民年金保険料が未納になっている場合は、国民年金に任意加入する方法もあります。任意加入は、自分で国民年金保険料を支払うことで、国民年金の加入期間を増やすことができる制度です。

任意加入ができるのは、次のすべての条件を満たす方です。

・日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の方
・老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない方
・20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480カ月(40年)未満の方
・厚生年金保険、共済組合等に加入していない方
・日本国籍を有しない方で、在留資格が「特定活動(医療滞在または医療滞在者の付添人)」や「特定活動(観光・保養等を目的とする長期滞在または長期滞在者の同行配偶者)」で滞在する方ではない方

国民年金の加入期間は最長で480カ月まで増やせます。480カ月に達すれば満額の国民年金が受け取れますし、たとえ480カ月に達しなかったとしても、加入期間を5年(60カ月)増やせれば単純計算で年10万円ほど国民年金の額が増やせますので、ぜひ活用しましょう。

なお、次の方も国民年金に任意加入できます。

年金の受給資格期間を満たしていない65歳以上70歳未満の方

年金の受給資格期間が10年未満の場合、国民年金をそもそも受け取れません。この場合、65歳以上70歳未満までであれば国民年金に任意加入できます。年金受給資格期間が10年に達すれば、国民年金を受け取れます。

外国に居住する日本人で、20歳以上65歳未満の方

日本国籍をもつ方が長期間海外に住む場合にも国民年金の任意加入ができます。本来、海外に住むと日本国内の住所がなくなるため、国民年金も強制加入ではなくなります。しかし、それでは老後のお金が少なくなって困る可能性があります。そこで、国民年金に任意加入することで、老後の年金を増やせます。

任意加入の国民年金保険料の納付方法は、原則として口座振替です。最大で2年分の保険量をまとめて納めることで保険料の割引が受けられる「前納」も可能です。

なお、外国に居住する方の場合は、国内にいる親族等の協力者が本人のかわりに納める方法と、日本国内の預貯金口座から引き落とす方法があります。詳しくは海外に引っ越す前に住んでいた自治体の窓口で相談しましょう。


国民年金はそもそも国民年金保険料を10年以上納めていないと受け取れません。また、受給資格期間を満たしていても、保険料を納めた期間が少ないと、その分満額から引かれてしまい、受け取れる年金額が減ってしまいます。

年金は老後の収入の大きな柱のひとつ。なるべくたくさん保険料を納め、老後の年金額を増やしましょう。また、もし国民年金保険料の支払いが厳しければ、ただ未納にするのではなく、免除や納付猶予の相談を必ずするようにしてください。

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