副業と住民税の関係性、気をつけるべき「住民税納付書」について税理士が見方を解説

働き方改革やコロナ禍における在宅ワーク浸透の成果もあって、会社員でも副業を認められるケースが増えているようです。でも「副業をはじめたけど、税金のことは全くわかりません」ですって? なんて……嘆かわしい!

本物の税理士でお笑い芸人、税理士りーなと一緒に楽しく税のことを知っていきましょう。

日本では給料から税金などが事前に引かれ、残った分を支給されるため、自分の給料がもともといくらで、いくら税や社会保険料を納めているかを知らない人も多いようです。お金の勉強をする機会もないので「自分が納税しているかどうか知らない」という人も少なくありません。

手取り額なんて、税理士の私から言わせれば無意味な金額ですよ! いま一度、ご自身の給与の総支給額と納めている税額がいくらなのか、確認してみてください。


住民税納付書が例年より遅れて届いたワケ

給与から引かれている税金には「所得税」と「住民税」という2つの税があります。住民税は住んでいる地域に納める税金で、所得税のデータを使って各自治体で計算されますので、年末調整や確定申告で計算された結果が必要となります。

副業をしているなど給与以外に所得(もうけ)があり、所得税の確定申告が必要な方の令和3年分の所得税の確定申告期限について、今年はまだコロナ禍の影響が大きいとして、特別な措置があり延長が認められました。通常ならば3月15日までに申告と納付をするルールですが、昨年も今年も1カ月の延長が認められたのです。

その影響もあって、昨年と今年は住民税の納付書の到着が大変遅かったです。例年ならゴールデンウィーク明けには届いていた住民税の納付書ですが、6月15日前後に届いたという方が多いようです。住民税は皆さんがお住まいの自治体が、すでに年末調整や確定申告で計算された所得税のデータを使って計算しますので、所得税確定申告の期限が1カ月遅くなると、住民税を計算したい自治体は所得税のデータをゲットするのが1カ月遅れるのです。

給与から天引きされる税金

この、住民税の納付書ですが、給与のみを収入として生活している会社員の方は、まず目にすることがありません。なぜなら、住民税の納付は、会社が本人に代わって納付してくれているからです。その金額はもちろん、ご自身の給与から毎月差し引かれていますので、給与明細をみれば、自分の住んでいる町に納めている住民税の金額はわかりますね。

つまり収入が給与のみなら、所得税は会社が「源泉徴収」といって、毎月少し多めに引いておいて年末調整で精算してくれます。一方、住民税は後払いにより12で割った金額ずつを毎月会社が納めくれているのです。これを自分で納めず「特別」に会社がまとめてやってくれていることから「特別徴収(とくべつちょうしゅう)」と言います。割り切れない端数は最初の6月分で上乗せされているので、6月だけ少し高めで7月から翌年5月までが同じ金額になります。

そのため会社員の方が「納付書」を目にするのは、自動車税や固定資産税ぐらいでしょうか?

副収入があっても住民税納付書が届かないケースも

一方、会社員でも副収入があって「所得税の確定申告書」を出した場合は、住民税の納付書が届く人とそうでない人の2つに分かれます。いったい何が違うのでしょうか?

給与収入(年末調整で精算されているもの)以外に収入がある方は、そのもうけが20万円以上あれば「所得税の確定申告」をすることになります。この申告の時にチェックすべき項目があります。それは住民税の取り扱いです。

確定申告書の2ページ目に「住民税に関する事項」という項目があり、「給与以外の収入については会社を通さずに自分で納めますか?それとも全部まとめて会社で処理してもらいますか?」と聞かれます。

画像:国税庁ウェブサイト「申告書A【令和3年分用】」より引用

自分で住民税の納付書を使って納付する場合は「自分で納付(普通徴収)」、会社でまとめてやってもらう場合は「給与から天引き(特別徴収)」という欄に「○」をつけます。会社に副業がばれたくないという方は、「自分で納付」の欄にグリグリと○印をつけていることでしょう。

その結果、給与分の住民税については、その税額の通知が会社に届き、副業を始める前と同様に何事もなかったように、翌年6月分から新たな税額で給与から天引きがスタートします。給与以外のもうけ分については、自分のところに住民税の納付書が届き「6月から納めてください」と言われます。

初めて住民税の納付書を受け取った方は、「ちゃんと確定申告して税金も納めたのに、まだ何か納付がいるの!?」とビックリする方もいるでしょうね。所得税と住民税は国と住んでいる自治体、それぞれ納付する先が違います。どちらも納めなければならないものですので、驚いていないでちゃんと納付してくださいね!

副業を始めて最初の確定申告を行った方から、実際に「こんな時期に納付書が来たんですが、何か手続きを忘れていたのでしょうか?」とお問合せをいただいたことが何度かあります。こうして副業を始めることで、ご自身の税に対する理解が深まったと思います。

そして、給与分については会社から横長の住民税決定通知書を受け取ることになります。これは「あなたの住民税が年間いくらだから12カ月で割って、6月分からこの金額が天引きになりますよ」というのを知らせる通知書です。これは副業をしてもしていなくても同じです。

今までちゃんと見ていなかったですって? なんて……嘆かわしい!

住民税決定通知書の見方

普通徴収の方が納付書とセットで受け取る「住民税決定通知書」も、会社からの天引きで完結する特別徴収の方が受け取る「住民税決定通知書」も、基本的には見方は同じです。大きく分けて4つのブロックから成っています。

それぞれの項目について、見ていきましょう。

画像:総務省ウェブサイト「納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿」より引用

・所得(もうかった分)
事業所得や雑所得(その他の所得)は「収入-支出」でもうけである「所得」が計算されますが、給与の場合は支出が分からないので、一定の計算式に当てはめて所得を計算します。なおこの際、給与の手取り額は一切使わず、総支給金額から計算をおこないます。冒頭で手取り額は無意味といったのは、この理由からです。
※詳しくは前回の記事を参照ください。

・所得控除
社会保険料や生命保険料を払ったり、養っている家族(扶養親族)や収入の少ない配偶者(控除対象配偶者)がいる場合など、色々「大変ですね」という意味で税率を掛ける前に所得から引いてくれる分。控除を多く引くことで課税所得が減って税額が減るので、「もっと控除ができないかな~」と検討するのが、節税をする上で有効です。

・課税所得
税金が課されるもうけという意味で、ここの金額に税率がかかります。

・税額

税額は「都道府県」と「市区長村」の2つから成っていて、それぞれ次の項目があります。

税額控除前所得割額(4):税率を掛けた結果出た課税所得に対する税額
税額控除額(5):税額から引いてもらえる金額(ふるさと納税・住宅ローン控除など)
所得割額(6):上記(4)ー(5)
均等割額(7):自治体ごとで決まっている金額で、一律全員にかかってくる「基本使用料」や「つきだし代」のようなもの

上記の(6)+(7)がそれぞれ、都道府県・市区町村に納める税額で、これらの総計が「年税額・特別徴収税額(8)」になり、給与から12で割った金額を毎月天引きすることになります。


「会社から受け取ったけれど、いままで見たことなかった」という嘆かわしい方も、一度は住民税を見直そうと思えたでしょうか?

なお、この住民税を減らすことができる制度が「ふるさと納税」です。「こんなに住民税を払っていたのか!」と衝撃を受けた方は、ぜひふるさと納税について(私の記事を読んで)学んで、挑戦してみてくださいね。

知っている人だけが得をして、知らずに損をしている人は気づかないこの世の中。あなたはこのまま「損」したいですか? それとも、税の知識で「得」したいですか?

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