台風が来る

 今時分、「半夏生(はんげしょう)」というドクダミ科の多年草は葉の半分ほどが白く変色して“半化粧(はんげしょう)”する。片白草(かたしろくさ)とも呼ばれる。今年でいうと7月2日、またはこの日から5日間を雑節の「半夏生」といい、今がその時季に当たる▲立夏から立秋の前日までを夏とすれば、今頃は夏の真ん中になる。といっても暦の上での話で、立夏は新緑の季節、立秋は夏の盛りに訪れるので、今が夏の折り返し地点とは感じにくい▲ましてや今年は観測史上、最も早く梅雨明けした。夏本番に入ったばかりというのが大方の実感だろう。梅雨の中休みがなかったぶん、干天の慈雨が降ったりと“夏の中休み”は来ないものか▲そう待ち望むが、実際はどうだろう。静岡県熱海市の大土石流から1年、熊本県南部を中心に襲った豪雨から2年と、追悼式が続いている。4年前は広島県などですさまじい土砂災害、5年前は福岡県や大分県に爪痕を残した九州北部豪雨…▲どれも半夏生の頃の雨で、悲しいかな、梅雨後半の非情さを小欄で書かない年はない。早くも梅雨が去った今年は今年で、またも不気味な空を仰ぐ。台風4号がきょう、本県に接近や上陸の恐れがある▲皆さんがこの新聞を手にするころ、雨や風は-と、案じながら書いている。人の心にも“夏の中休み”は来てくれない。

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