長崎の「黒い雨」分析 専門家会議が報告書 県と市、厚労省に認定要望

被爆体験者の救済を求める要望書を佐藤副大臣(中央)に手渡す平田副知事(左から2人目)ら=厚労省

 広島原爆の「黒い雨」被害救済に向けた被爆者認定の新基準で、厚生労働省が長崎で黒い雨に遭った人を対象外とした問題を巡り、本県の専門家会議が5日、報告書を公表した。過去の証言記録を分析し、長崎の被爆地域外でも黒い雨が降ったと客観的に認められるなどと指摘している。県と長崎市は5日、長崎の「被爆体験者」も広島と同様の事情にあるとして、厚労省に認定を要望した。
 厚労省は4月に新基準の運用を開始。▽被爆未指定地域で雨が降った客観的な記録がない▽被爆体験者が被爆者健康手帳交付を求めて最高裁まで争い、敗訴が確定している-の2点を理由に長崎を対象外とした。
 放射線や気象などの専門家4人が、1999年度に県市が被爆未指定地域で行った証言調査を統計学や気象分析などの面から解析し「降雨があったと認定できる」と結論づけた。雨よりも降灰などの証言の方がより多く、かつ広範囲で確認されており「放射能を帯びたものを雨に限定し、他を除外することは合理的ではない」とも言及した。
 過去の体験者訴訟判決との関連については「最高裁判決は原審の事実認定を是認しただけで判例に当たらず、拘束力がない」「黒い雨に遭ったかどうかの判断は示されていない」として、手帳を交付しても矛盾は生じないとした。
 5日、平田修三副知事と田上富久長崎市長らが厚労省で佐藤英道副大臣に非公開で要望した後、記者会見。平田副知事によると、佐藤氏は「黒い雨が降ったという客観的な資料の有無など課題について検討していきたい」などと従来通りの回答にとどまったという。田上市長は「被爆体験者は高齢化し時間がない。報告書が提出されたのは大きな要素。厚労省はしっかり受け止め、(救済に向けた)検討を加速してほしい」と強調した。


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