波乱に満ちたWEC第4戦、トヨタは2台が表彰台を獲得。小林可夢偉「満足のいくレースができなかった」

 7月10日、今年100周年を迎えたイタリア、モンツァ・サーキットでWEC世界耐久選手権第4戦『モンツァ6時間』の決勝レースが行われ、TOYOTA GAZOO Racingは8号車が2位、7号車が3位となり、2台のトヨタGR010ハイブリッドによってダブル表彰台を獲得した。

 前戦ル・マン24時間を制したトヨタ8号車(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)と、姉妹車である7号車(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス)は、気温30℃/路面温度50℃を超える暑さのなかで戦いの火蓋が切られたレースの序盤から接近戦を繰り広げた。

 スタート直後はグリッド順位と同じ2番手と4番手を走行していた両車両は、序盤戦に2回導入されたフルコースイエロー(FCY)の間にピット作業を行いツー・スリー体制とする。しかし、スタートから1時間後、ブエミがドライブする8号車に電気系トラブルが発生しペースダウンを余儀なくされる。
 
 ピット作業時に“パワーサイクル”と呼ばれるシステムの再起動を行なった8号車は30秒ほどのタイムロスで5番手に順位を落とすが、その後ペースを取り戻し、前を行く94号車プジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ)をかわして4番手へと浮上した。

 スタートから2時間半を過ぎた頃、GTEアマ車両のクラッシュによりセーフティカーが導入されると、この間にピットに戻った7号車が、スタートから首位を快走していた708号車グリッケンハウス007 LMH(グリッケンハウス・レーシング)を抜き総合首位に浮上。さらにリスタート後には708号車がペナルティを受けたためブエミからハートレーにドライバー交代を行なった8号車も総合3番手から同2番手へとポジションを上げる。

レース終盤に展開された平川亮(8号車トヨタ)とマシュー・バキシビエール(36号車アルピーヌ)による2番手争い 2022年WEC第4戦モンツァ6時間

 トヨタがワン・ツー体制を築いて迎えたレース終盤、8号車がニュータイヤを履く36号車アルピーヌA480・ギブソン(アルピーヌ・エルフ・チーム)に攻められる。ハートレーから替わった平川はこれを巧みに交わし続けていたものの、153周目にオーバーテイクを許し3番手に後退する。
 
 また、その翌周、首位を走る可夢偉の7号車とアルピーヌがストレート上で接触。これにより7号車は右リヤタイヤのパンクと車体右後部にダメージを負った。直後にFCYが出たため、スロー走行でピットに戻った7号車のタイムロスは1周分だけで済んだが、順位は首位から3番手に後退。さらに、7号車には接触に対する90秒のストップペナルティが科され、最終的には2周遅れの3位となった。

 一方の8号車は平川が最終盤にライバルを追い上げ、その差を2秒台にまで縮める。しかし、再逆転は叶わず2.762秒差の2位フィニッシュとなっている。

 このモンツァ戦からシーズン後半戦へと入ったWECは残り2戦。次戦は2019年以来、3年ぶりに開催される日本ラウンド『富士6時間』だ。トヨタが過去8戦7勝を誇る“ホームレース”は9月9~11日に富士スピードウェイで行われる。

 サバイバル戦となった第4戦モンツァを戦ったTGRドライバーの決勝後コメントは以下のとおりだ。

■首位アルピーヌを「逆転できなかったのは悔しい」と平川亮

■7号車トヨタGR010ハイブリッド

●小林可夢偉(チーム代表兼ドライバー)

「優勝を目指して全力を尽くしましたが、その機会を逃してしまいました。今日は、2台とも表彰台獲得が精一杯でした。私のスティントでは、走行ペースで少し苦戦しました。ポジションを守るために、ピットストップでタイヤを交換しないという戦略を採った結果、狙いどおりポジションを維持できましたが、その後のペースが落ちてしまいました」

「そして、アルピーヌと接触、車両にダメージを負って1周遅れとなり、さらにペナルティも科されましたが、結果的には最終的なレース結果には大きな影響はなかったと思います。今日は満足のいくレースができなかったので、次戦へ向けてさらに努力する必要があります。ドライバーズとマニュファクチャラーズの両タイトルを獲得するためには、次戦富士で絶対に勝たなくてはなりません」

「WECはハイパーカー間のバトルが激化し、今後もチャレンジングなレースが続くと思いますが、ファンの皆様にとっては素晴らしいことであり、我々もこの戦いを楽しんでいます。我々の2台どちらにもまだタイトル獲得のチャンスは残っていますし、絶対に諦めません」

●マイク・コンウェイ

「7号車にとっては不完全燃焼のレースで、残念ながらタイトル争いでもまた一歩後退してしまった。我々はレースをリードしていたが、数周ですべてを失ってしまった。運があれば勝てるペースだと感じてはいたものの、タイヤ戦略が順位を左右するレース展開となった」

「接触で優勝争いからは脱落してしまったが、3位表彰台は今日の我々にとっては最善の結果だ。この結果からさらに学び直し、シーズンが終わるまでハードワークを続けていく必要がある」

●ホセ-マリア・ロペス

「この厳しかったレースウイークを考えれば、最終的に2位、3位という結果はチームにとっては悪いものではない。残念ながら我々は接触でダメージを負って周回遅れとなり、また、ペナルティも受けることになってしまった」

「その時点で我々のレースは終わってしまったが、それまでは優勝を争い、エキサイティングなレースだった。今シーズンの残り2戦も、今日のように激しいものとなると思うが、その接近戦を勝ち抜いていかなくてはならない。次戦富士では強さを取り戻し、勝てるように頑張るよ」

優勝したアルピーヌのクルーを祝福する8号車のドライバーたち

■8号車トヨタGR010ハイブリッド

●セバスチャン・ブエミ

「2台それぞれにさまざまなことがあったレースだった。勝てるチャンスがあっただけに、僅差でそれを逃したのは少し残念だ。レース序盤に見舞われたトラブルでは、タイムロスを最小限にすべく全力を尽くしましたが、クルマが正常に走らず、容易ではなかった」

「セーフティカーが導入されたことで首位との差を詰めることができ、ふたたびチャンスが巡ってきました。ブレンドンと亮が素晴らしい走りを見せてくれて、最後アルピーヌを追い詰めることができたのは良かったと思う」

●ブレンドン・ハートレー

「とても良いレースができたと思っているが、6時間のレースにおいて数秒差で勝利を逃すというのは、やはり少し悔しい。セブはレース序盤にトラブルに見舞われたが、うまく対処したおかげで大きくタイムをロスすることなく済んだ」

「我々8号車3人のドライバーはレースを通して良いペースで走り抜き、エンジニアとメカニックも素晴らしい仕事をしてくれた。今日のアルピーヌは速かった。僕たちも悪くはなかったが、わずかに及ばなかった。この接戦をものにした彼らへ賛辞を送るよ。次戦富士ではもっと強くなって戻って来たいと思っている」

●平川亮

「逆転勝利を目指し全力で最後まで攻めたのですが及ばず、2位という結果は少し残念です。チームはセブのトラブルによく対処してくれて、上位から大きく離されずに済み、その後のセーフティカーで首位争いに復帰することができました」

「首位のアルピーヌをずっと僅差で追っていたのに、逆転できなかったのは悔しいです。シーズンは残り2戦となり、次戦富士は私にとってのホームレースです。チャンピオン獲得のためには、残り2戦アルピーヌよりも前でフィニッシュすることが必要であり、目標ははっきりとしています。表彰台の中央に返り咲くため、プッシュを続けます」

3位表彰台を獲得したトヨタ7号車マイク・コンウェイ、ホセ-マリア・ロペス、小林可夢偉組
トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing) 2022年WEC第4戦モンツァ6時間

© 株式会社三栄