オンラインスナックって楽しいの? 客足減に対抗、海外から“来店”も 長崎・銅座のスナック

画面越しに若菜さんと乾杯を交わす松尾さん(左)=長崎市銅座町、a’ul

 長崎県の新型コロナウイルスまん延防止等重点措置が3月解除され、飲食店への営業時間短縮要請が終了して3カ月余りたつが、夜の歓楽街の客足はコロナ禍前に程遠いようだ。そんな中、長崎市銅座町のスナック「a’ul(アウル)」が、来店せず有料のリモート通話で楽しんでもらう「オンラインスナック」に力を入れている。コロナ禍で減った売り上げを補うのが狙い。オンラインスナックって楽しいの? 半信半疑で店を訪ねた。

◎方言を楽しむ
 「なんば言いよっと~」。6月のある夜。扉を開けると、ママの松尾麻水さん(39)が方言全開で客と談笑中。だが店内に客の姿はない。代わりに松尾さんが目の前に置いたタブレットから、若い男性の声が。
 「長崎弁の空気が伝わる。方言を聞けるのが面白い」。画面の向こうから話したのは、北海道の歯科医の男性(36)。オンラインでの“来店”は既に5回ほど。自宅で自前のビールを片手に1時間以上アクセスした。
 料金は店によって異なるが、同店では一対一での利用(ママのドリンク1杯付き)で45分3500円(初回だけ30分2000円)。決して安くはないが、男性は「一対一で話ができる。各地のお店が選べるのも楽しくて、ついつい延長してしまう」と心底楽しそうだった。
 男性は感染防止のため繁華街に行けなくなったが、オンラインスナックに「救われた」と話す。「長崎に行く予定があるので、ぜひリアルで訪れたい」と声を弾ませる。

◎SNSで発信
 同店は国内最大級のサービス「オンラインスナック横丁」(本部東京)に加盟。各店は同サービスの予約サイトでオンライン客を受け入れ、売り上げの一部を支払う仕組み。現在約80店が加盟している。
 同店は5月にオンライン営業を始めたばかりだ。2019年にアウルをオープン後、1年もたたずに新型コロナ禍が始まり、売り上げはそれ以前の半分程度まで落ち込んだ。店を開けられない厳しい時期は脱したものの、売り上げは以前ほど芳しくない。オンラインは苦手と敬遠していたが、長崎市内の親しいママに誘われ「待っていても客足は戻らない。客が入っていない時間が使えれば」と一念発起した。
 力を入れているのは、交流サイト(SNS)を使って観光名所や地元グルメなど「長崎の良さ」を発信すること。オンライン客に見てもらえば手軽に共通の話題が持てるからだ。軍艦島や眼鏡橋、トルコライスなどに関する情報を写真や短文で頻繁に投稿している。
 オンラインの常連客は順調に増えており、遠くオーストラリアからアクセスする日本人も。松尾さんは「5月は売り上げ目標を達成できた」と顔をほころばせる。リモート会話に慣れたおしゃべり好きなら、手軽に旅気分が楽しめていいかもしれない。いまだにオンライン取材が苦手な記者はあまり自信がないが…。

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