54歳で3300万貯めた独身女性「お金を残す必要がない。いくらまでなら使って大丈夫?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、54歳、独身、会社員の女性。今年ローンを完済し、投資と現金の総額で3,300万円を貯めた相談者。子どもにお金を残す必要もないので、旅行やリフォームである程度お金を使いたいとのこと。いくら使い、どの程度残せば良いのでしょうか? FPの飯田道子氏がお答えします。


どの程度お金を使い、どの程度残しておくべきかが分からないので、ご教示ください。

今年初めに住宅ローンを完済しました。今までは月に20万程度で生活していましたが、もう少し使ってもいいと思われたので、ローン完済後は、家具などの買い替え、旅行などで、月に30万程度使っています。現在3,300万ほどの資産がありますが、株330万、投資信託債券900万、FX200万程度で、現金の割合が高いと思ったので、今は月に計25万程度(投資信託22万円、確定拠出年金1.2万円、外貨0.5万円など)を投資に回しています。納付が抜けたところもあるので、年金は13万円程度の様です。

できたら60歳の定年は待たずに55歳か56歳で現在の仕事は辞め、月20万程度に抑えた仕事でゆっくりしたいと思います。将来的にまた節約した生活をするのは特に抵抗はありませんが、子どもがいる訳ではないので、高齢になってお金を持っていてもしょうがないと思っています。今現在リフォームや旅行などでどの程度使っていいものか、出費の多い生活をどの程度していいものかよく分かりません。何か指標になるものがあれば教えていただけたらと思います。

【相談者プロフィール】

・性別:女性、54歳、会社員、独身

・住居の形態:持ち家(マンション・近畿地方・一人暮らし)

・毎月の世帯の手取り金額:50万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:100万円

・毎月の世帯の支出の目安:30万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:2万円

・食費:5万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:2万円

・保険料:3,000円

・通信費:5,000円

・お小遣い:8万円

・その他:10万円

【資産状況】

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,860万円

・現在の投資総額:1,450万円

飯田:今回は、どれくらい使って良いのか知りたい54歳の相談者様です。すでに住宅ローンは完済済みであり、大きな出費はあまりないようです。現在の月収は手取りで50万円程度。定年は60歳なのですが、それを待たずに月収は手取りで20万円程度の会社へ転職し、ゆっくり過ごしたいと考えているようです。相談者様の投資を含めた預貯金はおよそ3,300万円あるのですが、どれくらい使っても良いのでしょうか? また、どのような点に注意すれば良いのか、考えてみましょう。

働き方を変えるとどうなる?

現在、公的年金は13万円受け取れる状態のようですね。とはいえ、これは、あくまでも、見込額となります。現在の手取り額50万円の収入をベースにして算出された金額のため、働き方を変えて収入が減ってしまったときには、公的年金13万円は下回ることは明らかです。まず、それでも良いかを考えてみてください。

また、月収は手取りで20万円程度の仕事とおっしゃっていますが、職種にもよりますが、年齢を重ねるほど、転職するのは難しくなってしまいます。ゆっくり働きたいという意志は大切にして欲しいのですが、転職をすることで収入が想定以下の金額になってしまうことも考えられます。

可能であれば、勤務先を変えることなく、働き方を変えることはできないか、相談してみてもいいでしょう。この場合も収入が減ってしまえば、将来、受け取れる公的年金は減ってしまいますが、今の仕事そのものが嫌でないのなら、検討する価値はあるのではないでしょうか?

もちろん、想定以下の収入でもゆとりを優先したいなら、ゆとりを優先してください。

何にどれくらい使いたいかを明確にしましょう

現在は毎月30万円程度の支出があるようですね。相談者様の場合、リフォームや旅行にどれくらい使っても良いのか知りたいとのことですが、大切なことは、やりたいことは何かを明確にすることです。

指標などは、あくまでも平均値ですので、自分が実現したいことと隔たりがある可能性がありますので、これからやるべきこと、やってみたいことを書き出し、それを実現するためには、どれくらいの資金が必要になるのかを考えていくと良いでしょう。

たとえばリフォームの場合です。年齢を重ねた場合、バリアフリー化を希望するケースは多いのですが、要支援・要介護の認定を受けているときには、介護保険から最大で20万円の助成金を受けることが可能です。どのような改修が必要かは、身体状況によって違いますので、1回で完璧なリフォームを行うことは難しいのが現状です。

一般的なリフォームの場合は、自分の好きなようにすれば良いのですが、どこまで手を加えるのかによっても金額は異なってきます。リフォーム会社のショールームなどを見学しながら、やりたいリフォームはどれくらいかかるのかを知ることから始めてください。

旅行についても、同じです。たとえば海外旅行をする場合でも、エコノミークラスかビジネスクラスなのかで交通費そのものが大きく変わりますし、宿泊先もホテルのグレードによって変わってきます。また、現地で楽しむ内容によっても必要な費用は変わってきますので、どこへ、どのような旅行をするのかをイメージできなければ、余計にお金を使いすぎてしまったり、思いっきり楽しむことができなくなったりします。

年齢を重ねると収入は限られてしまいます。できるだけ無駄のない支出を心がけていきましょう。

将来の生活費から逆算して、使って良い金額を割り出す

実際に、今の支出を参考にしながら、セカンドライフの生活にが、どれくらい必要なのかを考えてみましょう。

預貯金は投資を含めた3,300万円、公的年金額11万円(転職で減った場合を想定)、毎月の生活費20万円の60歳から90歳までも必要な資金を算出します。

公的年金が受け取れる65歳まで働かない場合には、5年間で生活費20万円×12カ月×5年で1,200万円。65歳から90歳までは、生活費20万円×12カ月×25年=6,000万円。収入となる公的年金11万円×12カ月×25年=3,300万円。6,000万円-3,300万円=2,700万円。

1200万円+2700万円>3300万円となり、600万円の赤字になってしまいます。

毎月の生活費を15万円にした場合は、60歳からの5年間の支出は900万円。公的年金受給後の90歳までの生活費は4,500万円。公的年金は3,300万円となり、25年間の支出額は1,200万円です。

その場合、900万円+1,200万円<3,300万円となり、1,200万円、手元に残る計算です。

投資を含めた預貯金は3,300万円のため、必ずしも3,300万円がそのまま残っている訳ではありません。また、固定資産税などもここに計上されていないため、余裕を持って、自由に使って良いお金は、500~800万円程度に留めておくと安心です。

これからの働き方や、やりたいことによっても収入や支出額は変わってきます。これをひとつの目安にして、自分に必要な支出は何かを考えて計画してみてください。頑張ってくださいね。

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