「アベ政治」を振り返る4…「桜を見る会」神戸学院大教授・上脇さん「幕引きは許されない」

安倍前首相の「桜を見る会」疑惑の本質は何なのか。政治資金規正法違反などの容疑で安倍元首相を告発した一人、神戸学院大教授の上脇博之さんに話を聞いたのは2020年12月のことだった。(新聞うずみ火編集部)

疑惑の核心とされる前夜祭は2013年から東京都内のホテルで開催。20年12月19日付の毎日新聞によると、「安倍氏側がホテル側に支払った開催費用は15~19年の5年間で約2300万円だったが、1人5000円だった会費の総額は約1400万円で、その差額分の約900万円を安倍氏側が補てんしていた」と報じている。

後援会が差額分を補てんしていたなら公職選挙法が禁じる寄付にあたり、収支は後援会の政治資金収支報告書に記載されていない。

東京地検特捜部は、補てんに関わった公設第1秘書らについて、政治資金規正法違反(不記載)で略式起訴する方針だという。

安倍氏は不起訴となるのか。上脇さんは「秘書ら2人の罰金刑で終わらせるようなら、東京地検特捜部の存在価値はなきに等しい」と批判する。

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「この問題は、後援会だけでやれることではない。安倍氏は『秘書任せだった』と逃げるつもりなのでしょうが、桜を見る会と前夜祭は安倍氏の日程と調整しないと決まらない。しかも、後援会のメンバーは山口と東京の往復の飛行機代、ホテルの宿泊代、東京観光など、お金がかかるわけです。前夜祭に1万1000円払うとなると参加者が減る可能性もある。安くして参加できるようにしたい。となると、安倍氏に相談するのが当たり前。秘書が勝手に、というストーリーは成り立たない。いわば、安倍氏抜きでは進まない話なのです」

桜を見る会の参加者集合写真(首相官邸HPより)

さらに、「補てん分の資金が安倍氏の政治団体『晋和会』から出ていた可能性が高いが、どうやって用意したのかが問題だ」と指摘する。

「安倍氏自身の文書通信交通滞在費や、官房機密費が使われたとも考えられます。これらは本来、公務に使うべきお金なので、政治活動に用いられた時点で法に抵触します。晋和会の代表は安倍氏なので、その責任を問わずに、秘書だけを立件すれば問題の本質的な部分を見失ってしまうことになる。少なくとも、公判が開かれない略式起訴ではなく、公開の刑事裁判で真相を明らかにすべきです」。そのためには「強制捜査して証拠をつかむしかない」

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また、安倍氏が繰り返した「補てんはなかった」との国会答弁は虚偽だったことに触れ、「虚偽をすれば偽証罪に問える証人喚問を視野に国会招致すべきだ」と主張する。

上脇さんとともに告発した弁護士らが、安倍氏側が政治資金収支報告書に記載しなかった額が約5600万円に上る疑いがあるとする新たな告発状を東京地検に出した。

「幕引きを絶対に許してはいけません」。上脇さんは語気を強めた。

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