日本代表へ復帰した宮市亮(横浜F・マリノス所属)が18日、オンラインでの囲み取材に応じた。
およそ10年ぶりの代表復帰となった宮市。高校卒業後にアーセナルへ加入したものの、度重なるケガによって苦悩のキャリアを歩んできた。
そんな彼はいま何を思い、何を感じているのだろうか?
――10年ぶりの日本代表。代表のエンブレムを身に付けて感想は?
本当に身が引き締まる思いですし、選出された時にも「嬉しさと共に責任感」っていうコメントしたと思うんですが、よりそれが高まってきています。
――ケガの多いサッカー人生だったが今年はうまくいっている
怪我に関しては自分一人では(ここまで)来れなかったというか。
本当にマリノスに帰ってきてからメディカルスタッフの方にすごく尽力していただいてケガなくシーズンを送れているので、まずはそこに感謝したいと思います。
出場機会も昨年と比べて増えてきて、リズムが出てきたという面でもケガしにくくなっているところなのかなと。
――復活するターニングポイントになった試合やタイミングは?
ターニングポイントになった試合は間違いなくヴィッセル神戸戦で起用してもらった時だったと思いますね。
多分あそこでチャンスをもらえて、結果は出なかったんですけど、自分なりのパフォーマンスというのを見せることができて、あそこがターニングポイントになった一つの試合なのかなと思います。
――以前と意識は変わった?
あまり個人的にというよりもチームとして、まずこの大会を勝ち取りに行く。その中で、自分は一つのピースに過ぎないと思っているのでこの代表のためにプレーしたいなという想いもあります。
10年間いろんなこともあって、自分なりに苦しい経験も本当にして、そういう苦しいところから這い上がっていく姿(を見せたい)。
この期間中にも…それこそ武藤嘉紀選手(ヴィッセル神戸)だったり、怪我をしてしまって、今回代表に来れなくて悔しい思いをしている選手もいるでしょうし、そういう選手たちの想いも背負ってというかプレーをしていきたいと思います。
――この10年間で人間的に成長したことは?
幾つかあるんですけど、一番は10代でプロデビューしてすぐに起用してもらって、代表にも入って、すごく自分の中で大きな理想を描いていたというかそういう10代でした。
(だけど)いろんな経験を経て、あまり先を見なくなったというか。(ケガで)歩けなくなって、歩ける喜びとかも知って、1日1日に感謝できるようになっていった。
本当に次のトレーニング、次の試合。「5年後こうなっていたい」とか「10年後こうなっていたい」みたいなのが10代の頃はあったんですけど、今はより現実的になりました。
「1日1日を大事にしていこう」っていうマインドに変わったのが10代と比べて大きく変わったところかなと思います。
あとは本当の意味で感謝ができるようになった。サッカー選手として当たり前にプレーできるのは本当に周りの支えがあってのことだとすごく感じているので、感謝の気持ちを持ってプレーしていきたいなと思います。
――「大きな理想」というのは具体的に?
代表というよりも18歳でアーセナルに行って、アーセナルでトップに上り詰めたいって想いが当時はありました。
でも日本代表に入っても周りのアーセナルの選手はもう代表のエース格だったので焦りもあって。幸せに思えてなかったというかすごく焦りもあった10代だったと今振り返ると思います。
そんな理想を持ってた10代だったんですけど、今はそういうマインドもちょっと変わってきたというか、さっきも言ったように感謝しながらプレーできているので、今回エンブレムをつけさせてもらって誇りを持ってプレーしたいと思います。
――ケガの中でもサッカーを楽しめるようになったタイミングは?
膝の前十字靭帯を3回目損傷した時にドイツで「このまま手術をしたらもしかしたら引退をしないといけないかもしれない」っていう話をされました。
ちょうどその時期に契約も切れる段階で、「このままもう自分のキャリアが終わってしまうんじゃないか」っていう時もありました。
そういう経験から、プロ選手として当たり前にやれることは当たり前じゃないんだなっていうことを身をもって体験してから、本当に日々に感謝できるようになりました。
試合に出られない時期もありましたけど、サッカー選手としてやれているだけでも幸せなんだっていうところは感じてたので、そういう時にポジティブに取り組めていったと思います。
――A代表デビューは2012年5月23日のアゼルバイジャン戦。「すごく緊張した」と話していたが今は?
緊張感というものは持っています。
当時の緊張感というものは正直日本代表のためというよりも個人のため…個人のプレーに期待していたところでの緊張感というのはありました。
ただ10年の時を経て、日本代表への皆さんの期待というかそれに応えないといけないチーム。そっちに対しての緊張感というかそれが高ぶっているところですかね。
――デビュー戦でのプレーは覚えてる?
覚えてますね。めっちゃ緊張して多分ファーストプレーでこけたと思います(笑)。
――今回は大丈夫でしょう?
いや、どうですかね(笑)。本当にチームのために何ができるかというところがまず何よりなので。
自分のためというよりチームのために何ができるか。(試合に)出る・出ないに関係なく、このチームでこのE-1(サッカー選手権)を勝ちとりにいくために自分ができることを最大限したいと思います。
――ワールドカップ本大会に向けての野心は?
そうですね。たださっきもお話ししたんですけど、19歳の時には野心を持ち過ぎて(常に)自分に満足できなかった。メンタルコントロールの面で自分はあんまり野心を持ち過ぎると上手くいかないタイプなので。
本当に目の前の一つ一つのトレーニング、一つ一つの試合に取り組むところをやっていけば自ずといろんな結果は後から付いてくるものだと信じてやっています。
まずは明日の試合。(このあと)午後に練習ありますけど、そこに最大限集中してやっていきたいと思います。
――海外組から何か声をかけられた?
お世話になってる先輩方はたくさんいて。個々に名前を出すとキリがないんですけど、皆さんから怪我の時期もポジティブな言葉をいただきましたし、代表選出されてからも「ここからだぞ」っていう話もいろんな先輩方から頂きました。
――具体的に印象に残る言葉などあれば
吉田麻也選手は自分が10代の頃からお世話になってる先輩の一人。
ケガの時からすごいいろいろアドバイスくれたり、代表の話もいろいろ聞かせてもらったりという中で、今回、「選ばれたことに満足するんじゃなくて、ここからもっともっと自分を出して上を目指してほしい」という力強い言葉をいただきました。
――吉田選手から「カタールに行こう」とは言われなかった?
いや、そこに関してはもう本当に自分なんてまだまだペーペーなんで(笑)。先輩方に近づけるように、「本当のA代表」に絡んでいけるように、まずはここでしっかりプレーしたいと思います。
――光と影のあったキャリア。ファンたちにどういった姿を見せたい?
サッカー選手としてこれだけ怪我をしているのは決して誇れることでも何もなくて、むしろ恥ずかしいぐらいのケガ歴なんですけど(苦笑)。
ただこうしてサッカー選手としてできているのも周りの皆さんの声援だったりポジティブな言葉があってのところだと思います。そういう感謝の姿勢というものはサッカー選手としてピッチの上で見せていくしかないので、ピッチの上で見せていきたい。
ケガで苦しんでいるアスリート…それこそ小中学生、高校生、学生と、ケガに苦しんでサッカーできないという人も多いと思うんですけど、今リハビリやっている時間がいつか報われる日が必ず来ると思う。
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本当に苦しい時もあると思いますけど、“引退宣告”されたくらいの選手が日本代表に返り咲くというか…返り咲くほどの活躍は別にしてないんですけど(笑)、また入れるチャンスも本当に続けていれば必ずあると思うので、そういう方たちを勇気づけられるようなプレーをできたらいいなと思います。