検査陽性率70%超「あり得ない高さ」通常医療が逼迫の恐れ

森澤雄司部長

 新型コロナウイルスの1日当たりの栃木県内感染者が過去最多の1783人だった20日、自治医大付属病院感染制御部の森澤雄司(もりさわゆうじ)部長が下野新聞社の取材に応じた。県が発表する19日までの直近1週間の検査陽性率は過去最高の71.1%で、森澤部長は「あり得ない高さ」と指摘。重症化する患者は少ない一方、医療従事者の感染が通常医療の逼迫(ひっぱく)を招くことを危惧した。

 6月末からオミクロン株の派生型「BA・5」への置き換わりが急速に進んだ。森澤部長は「感染力が非常に強まっている。感染者が増える局面はしばらく続くだろう」と分析し、現状では発熱などの症状があれば「まずはコロナを疑って差し支えない」とも話す。

 感染急拡大の背景として、日本では米国などと比べて感染者の数が少なかったことを挙げる。社会全体が持つ免疫が比較的薄い中で、感染力の強い変異株が広がった可能性を示唆した。

 感染者が急増する一方、重症者はこれまでの変異株と比べても非常に少ない。しかし医療スタッフやその家族への感染が課題で、「一般医療が維持できなくなるのでは」と危ぶむ。

 ワクチンの発症予防効果も、BA・5には未知数の部分が大きい。一方「重症化予防には効果がある」と、特に高齢者や基礎疾患のある人には積極的な接種を呼びかける。それ以外の人でも「社会全体で免疫を持って流行を小さくすることで、感染による健康被害から守られる人がいる」と、接種の意義を強調する。

 行動制限については、重症化の頻度が低いことを念頭に「基本的な感染対策を維持しつつ、社会活動は元に戻すことが基本」と指摘。「感染リスクの高い場面でのマスク着用や手指消毒など一般的な対策に改めて立ち返り、実践してほしい」と訴えた。

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