那須烏山の養豚場で豚熱 国内最多5万4000頭殺処分

JAなす南本店に設けられた消毒ポイント=23日午後4時45分、那珂川町白久

 栃木県は23日、那須烏山市内の養豚場1カ所で豚熱(CSF)の感染を確認したと発表した。約5万4千頭を飼育する国内大手の大規模農場で、県は全頭を殺処分する。殺処分数は、2021年4月に那須塩原市で発生した3万9千頭超を上回り、国内最多となる。今回のケースは匿名の情報提供で発覚した。国や県は今後、原因や農場からの届け出がなかった経緯などを調べる。

 県によると、21日夕、匿名で県に子豚が大量に死亡したなどとするメールが届いた。県は翌22日に立ち入り検査を実施。農場側から、死亡頭数が大幅に増えたという説明があり、豚熱の疑いが高まった。家畜保健衛生所で実施したPCR検査で陽性となった後、国の専門研究機関の検査で23日夕に陽性が確定した。

 家畜伝染病予防法は、豚熱の症状や死亡頭数の増加などを確認した所有者は、速やかに都道府県に届け出る義務がある。県によると、農場側が届け出なかった理由について「熱中症や他の病気の疑いがあった」と説明したという。県は「6月は暑い時期もあり、熱中症の影響も多少なりともあった」などとして慎重に経緯を調べる方針。

 県は同日午後6時から、殺処分を始めた。当面は1日当たり150人の県職員を投入し、今後、市町や農業団体の協力も仰ぐ。熱中症防止のため、作業は夜間から翌朝にかけて進める。

 埋却作業や農場の清掃、消毒など全ての防疫措置が完了するのは2カ月半後を見込む。県は同日、補正予算18億円を専決処分した。

 昨年4月、県内農場で最初の豚熱感染が発生して以降、県は全147農場で立ち入り検査を実施するなど官民連携で対策を講じてきた。福田富一(ふくだとみかず)知事は臨時の記者会見で「対策を強化していた中で残念。改めて各農場を点検し、原因特定後にもさらに点検をしていく」と述べた。

 豚熱は全国83例目、県内では4例目。77例目以降は、北関東3県で発生している。農林水産省動物衛生課は「3県は野生イノシシの生息場所と農場の距離も近い。リスクは高い」とした。

 県によると、豚熱は人に感染せず、感染豚の肉を食べても人体に影響はない。

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