患者急増に医師も恐怖感 休憩も削り…対応に追われる発熱外来

発熱外来を受診した患者から抗原検査用の検体を採取する横山院長=22日午前、栃木市箱森町

 新型コロナウイルスの感染急拡大に伴い、栃木県内の発熱外来は患者急増への対応に追われている。せきやだるさ、発熱など比較的症状が軽い人が大半だが、陽性者の急激な増加に医師は「恐怖感を持つ」と漏らす。医療現場の負荷は高まりつつある。医療従事者に感染が広がれば通常診療の制限につながる恐れもあり、関係者は感染拡大を抑制する必要性を訴えた。

 「世界が変わった」。宇都宮市宝木町2丁目、宇都宮協立診療所の医師武井大(たけいだい)さん(45)は、16~18日の3連休明けからの患者の激増をそう表現した。

 1日当たりの外来患者数は第7波前より3割ほど多い。19日には検査した39人中29人が陽性で、陽性率が7割を超えた。ほとんどが軽症だが、かかりつけ医がなく、相談先に悩み受診が遅れた患者もいた。「相談できない不安は大きいだろう」とおもんぱかる。

 コロナ対応に加え、休憩や研修の時間を削って通常の外来や往診、ワクチン接種も続けている。「業務の密度が非常に増している。スタッフに感染が広がれば、診療を制限せざるを得ない」と危機感を口にした。

 介護施設が休業し、日中に過ごす場がないという相談もある。今後は重症化リスクの高い人が自宅療養を余儀なくされることや救急医療への影響を懸念。「まずは感染者数を減らすことが必要だ」と訴えた。

 栃木市箱森町、よこやま内科小児科クリニックでは、駐車場に設けたコンテナで発熱者に対応している。

 10人に1人ほどだった陽性者の割合は、7月半ばから4割ほどに増加した。横山孝典(よこやまたかのり)院長(59)は「これまでとは増え方が全く違う」と話す。検査キットは不足気味。注文しても思うように入荷せず、診療への影響が心配の一つだ。

 高齢者など重症化リスクが高い患者には、コロナの治療薬を処方。それ以外の人には、解熱剤など症状に応じた薬を出している。1回の診察が終わるたびに換気と消毒を行うため、診察には時間がかかる。

 猛暑の中、熱中症にも不安がよぎる。防護服姿での作業でスタッフの疲労も大きく、体調に変化がないか声を掛け合いながら対応している。

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