転職を考える50代が知っておきたい、家計の見直し方と老後資金への対策方法

定年まであと少しという50代半ばのタイミングで老後のライフプランを考えた際、このままこの会社で働くべきなのか……と悩む方も多いようです。

そこで、50代で転職を考える際に行いたい、家計の見直しと老後資金対策について解説します。


50代で転職、賃金はどうなる?

50代での転職は賃金が減る可能性もあり、今後の生活が成り立つのか心配で転職を迷う場合も多いでしょう。実際、転職をした方の賃金の変動はどのような状況か、厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概要」を見てみましょう。

令和2年の1年間の間に転職した方の全体で、前職に比べ賃金が増加した方の割合は34.9%、減少した方は35.9%となっており、増えた方と減った方は同じくらいです。しかし、50代後半に絞ってみると、賃金が増加した方の割合は21.4%、減少した方は47.7%となっており、減少した方がかなり多くなっています。

50代で転職を考える際は、しっかりと今後の生活設計を立てる必要がありそうです。

資産と負債の確認し、ローンの完済も検討

転職をしても老後資金が不足しないかどうかを確認したい場合、まずは現在の資産と負債を確認する必要があります。

資産としては、預貯金や株・投資信託などの投資資産、積立型の生命保険や個人年金保険の残高などがあります。退職した場合に支給される退職一時金や企業年金残高なども含めて試算しましょう。

負債は住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなどがありますが、金利や完済までの期間を確認し、確実に返済可能なのかを確認しましょう。可能ならば、ローンの繰り上げ返済や借り換えをしておくことも検討しましょう。

現在の家計を見直して無駄な支出を減らす

同時に、現在の家計を見直して少しでも支出を減らしておくようにしましょう。スマホの契約を大手キャリアから格安スマホへの乗り換えると、夫婦2人で月に1万円程度削減できる場合もあります。

また、若いころに入った生命保険を見直すことも有効です。今後のライフプランやご自身の状態を鑑みて、不要な保障があれば削減し、医療や介護などへの備えが十分か、この機会に確認しておきましょう。

電気や都市ガスの会社を自由に選べる地域の方は、料金を見積もって安いところへ乗り換える方法もあります。会社によって、ポイント還元や割引特典などを受けられる場合もあり、プラスαのメリットがあるかもしれません。

これらの節約を行い、例えば合わせて月1万円節約できると、25年間で300万円もの差が出てきます。少しずつの積み重ねが老後の生活には大きく影響するということです。

副業や夫婦で収入を増やす方法を検討

転職で収入が減る場合、可能なら副業OKの勤務先を選べば収入減を補うことができます。月に数万円でも収入を得られれば、退職後の収入にもつながりそうです。

また、配偶者の収入アップも検討してみましょう。パートやアルバイトで働く場合でも、一般従業員の4分の3以上の労働時間、労働日数があれば社会保険に加入できますが、それより短い労働時間でも、従業員(短時間労働者を除く)が常時500人を超える事業所では、下記の条件を満たせば厚生年金に加入できます(2022年7月現在)。

(1)週の所定労働時間が20時間以上であること
(2)雇用期間が1年以上見込まれること
(3)賃金の月額が88,000円以上であること
(4)(昼間の)学生でないこと

2022年10月以降は、この条件のうち、(2)の雇用期間が「1年以上」から「2ヵ月以上」に緩和されます。さらに適用される事業所の従業員の数が「常時500人を超える」から「常時100人を超える」に拡大されますので、これまで対象外だった方も働き方は同じでも加入できる可能性があります。

社会保険(厚生年金)に加入して働くと、保険料を払わなければならないと思うかもしれませんが、半分は会社が負担してくれて、配偶者自身の老後の年金も増やすことができます。あえて配偶者が厚生年金に加入しないように調整して扶養内で働くより、可能ならば世帯全体での収入を増やす方法を検討してみても良いでしょう。

働く期間を延ばすことも有効

現在、多くの企業では再雇用や定年延長などで60歳以降も65歳程度まで同じ会社で働くことができるようになっていることが一般的ですが、2013年の「高年齢者雇用安定法」改正により、2025年4月以降は全ての企業で定年が65歳以上に義務付けられます(現在は経過措置中)。

それでもあえて転職という道を選ぶなら、65歳といわず、なるべく長く働くという選択肢もあります。収入が減ったとしても長く働くことができればその分をカバーできますので、老後の生活の安定につながります。

企業年金は転職先の企業年金やiDeCoに移管可能

老後資金を考える場合、退職金が大きな割合を占めるケースも多いでしょう。企業の退職金制度によっては、転職の際に一時金として退職金を支給する会社もあります。一時金としてもらった場合には、生活費として使ってしまうことのないよう、適切に運用しながら老後資金として確保しておきましょう。

また、確定拠出企業年金(企業型DC)や確定給付企業年金(DB)などの企業年金は、転職先の企業年金制度に移管できるようになっています。これまで、企業型DCの制度がある会社員は、iDeCoに同時加入することが難しかったのですが、2022年10月以降は基本的に同時加入できるように改正されますので、さらに老後資金を増やすことも可能です。

企業型DCの移管は前職の企業年金の加入者資格を喪失した日(退職日の翌日)が属する月の翌月から起算して6ヵ月以内に行う必要があります。すぐに転職先が決まらない場合には、自分で個人型確定拠出年金(iDeCo)へ移管しておくようにしましょう。

また、転職先に企業年金制度がない場合も、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移管するようにしましょう。iDeCoを始める場合は自分で金融機関や運用商品を選択するなどの手続きが必要になります。普段利用している金融機関でもよいですし、ネットで資料請求ができる金融機関もあります。手数料の違いや運用商品の数などを比較して選ぶようにしましょう。

50代の転職は、総合的な対策で老後資金不足を防ぐ

50代での転職は、老後も間近に控えて不安な部分もあると思いますが、これまで述べてきたような対策など、できることを早めに行うことで老後資金不足を防ぐことは十分可能です。また、家族の協力も必要となります。

人生100年時代、今後のライフプランについて家族で十分に検討して新たなステージに進みましょう。

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