全頭処分なぜ必要? 那須烏山の豚熱、5万6千頭

防疫作業を進める県職員ら=24日午後、那須烏山市(県提供)

 那須烏山市の大規模農場で豚熱(CSF)が発生し、約5万6千頭の殺処分が進む。国は、豚熱に感染した豚だけでなく、発生した農場にいる全ての飼育豚を殺処分の対象にしている。厳しい対応に対し、養豚農家の間には疑問もくすぶる。全頭処分の理由は何か。背景を探った。

 家畜伝染病予防法では、感染した豚と、病原体に接触した疑いのある豚を殺処分する義務を定めている。同法に基づく「豚熱に関する特定家畜伝染病防疫指針」では、処分の対象を具体的に「患畜が確認された農場で飼養されている豚」などと定義している。

 その上で、農林水産省動物衛生課は、全頭処分について「豚熱は強い伝染力と高い致死率が特徴。発生農場の外にウイルスを出さず、他の農場を守るために必要だ」と説明する。

 一方、県内外の養豚農家の間では「ワクチンを打てばまず発症しない。感染が確認されていない豚舎の豚で、症状がなく抗体価が上がっていれば、全頭処分までは必要ないのではないか」という声が少なくないという。

 金子原二郎(かねこげんじろう)農相は26日の記者会見で「ワクチンは発症を防ぐものであり、感染を防ぐものではない」と強調。同省の担当者は「抗体価の確認にも時間はかかる。防疫措置は速やかに進める必要がある」と全頭処分の意義を唱えた。

 生産者からは全頭処分に対する丁寧な説明を求める声も上がっている。

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