◆横浜1-0東海大相模
1万9千人の大観衆が固唾(かたず)をのんで見守ったクライマックス。名門同士の試合でも近年類を見ない好勝負が決したのは0―0の九回2死二塁だ。
萩が1ストライクからの2球目、外角スライダーを芯で捉える。「引きつけて打つ。イメージ通り。最高の形」という打球は右前で弾んだ。
二走岸本がヘッドスライディングで捕手のタッチをかいくぐり、サヨナラの本塁へ。この日が17歳の誕生日だった殊勲の2年生は「自分の一本で甲子園を決められた」と右拳を高々と掲げ、歓喜の輪に加わった。
一回と七回に先頭で出塁した走者をセオリー通りに犠打で送るも、なかなか東海大相模の好右腕庄司から点を奪えない。九回は二塁打を放った先頭岸本を送ろうと試みるも、4番玉城がスリーバントに失敗。想定したスクイズによる決勝点のシナリオが崩れた。
それでも、村田浩明監督(36)は「うちが勝つパターン」と、選手への信頼は一つも揺らがなかったという。ミスを互いにカバーし合う―。救ったのは新チームになってからテーマに掲げてきた「結束力」だった。
決勝打の萩は打席に入る直前、主将玉城から「結果を気にせずに振ってこい」と言われた。大会直前に腰を痛めながらも練習量はチーム一。「打てなくても3年生が寄り添ってくれた。まだ一緒に野球ができるのがうれしい」。ヒーローのこの言葉に、今の横浜の強さが凝縮されている。
萩はライバルに感謝の念も込めて言う。「今までの相手と強さが違って怖さもあった。最後の最後まで分からなかった」。横浜は敗者の思いも背負い、神奈川の代表として全国の頂に向かう。