生と死、再生テーマに新作27点 新見の美術館でタペストリー展

むらかみさんが制作した新作「いのちを抱く~地より来て地に還るもの」(中央)などが並ぶ会場

 新見市法曽の猪風来(いふうらい)美術館で、染織家・むらかみよしこさん(72)のタペストリー展「いのちを抱く~地より来て地に還(かえ)るもの」が開かれている。会場には、2020年2月に急逝した四男で、縄文造形作家・村上原野さん(享年32歳)の遺作をモチーフにした新作など27点が展示されている。9月末まで。

 作品展と同名の新作は縦2.65メートル、横2.5メートルで、1年がかりで制作した。中央に母なる大地を象徴する女性を配置し、上部には女性から湧き出るようにチョウやトカゲ、草木などが描かれている。下部には骨になった魚や動物が土に返っていく様子を表した。

 生と死、再生をテーマにした新作は、エゾシカを題材に同様の世界観を表現した造形作品を残した原野さんへの追悼で、女性の両腕にはその遺作が抱きかかえられている。

 むらかみさんは、夫で縄文造形家の猪風来館長(74)とともに同美術館を拠点に活動。息子の原野さんは新進気鋭の作家として注目を集めながら、制作中に倒れた。

 タペストリーは羊毛を紡いで糸にし、ヨモギやクワの葉、ヒノキの皮などで染め、織機で仕上げている。むらかみさんは「原野のことを思い、語り合いながら糸を織り込んだ。巡りゆく生命を感じてもらえれば」と話している。

 会場では、新作に込めた思いをつづった絵本を販売。森の中で生きるタヌキやキツネなどを描いた旧作も展示している。

 開館は午前9時半~午後5時。月曜休館(9月19日は開館し、翌日休館)。観覧料は一般400円、高校生200円、中学生以下は無料。問い合わせは同美術館(0867―75―2444)。

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