出血熱病原体の増殖阻害に「アビガン」が効果 長崎大、BSL2実験で確認

 日本で開発された新型インフルエンザ治療薬ファビピラビル(商品名アビガン)が、致死性の高い感染症アルゼンチン出血熱の病原体、フニンウイルスに対し増殖阻害効果を持つことが、長崎大高度感染症研究センターの研究グループによって確認された。
 オンライン学術誌プロス・パソジェンズにこのほど掲載された。
 アルゼンチン出血熱は、毎年アルゼンチンで数十~数百人の感染者が報告され、致死率10~30%といわれる。日本では、南米出血熱の一つとして、危険度の高い「1類感染症」に指定されている。ワクチンは存在するが、効果的な治療薬はまだ開発されていない。
 研究グループの安田二朗同センター教授によると、同大熱帯医学研究所の「バイオセーフティーレベル(BSL)2」実験室で使用可能なフニンウイルスのワクチン株を使って実験。ファビピラビルが培養細胞内で同ウイルスの増殖を抑えることを確認した。
 ファビピラビルの濃度を変えてウイルスの増殖実験を続けたところ、11代目で耐性を持つ変異ウイルスが出現。そこで他のウイルス感染症治療薬、リバビリンやレムデシビルを併用したところ、耐性ウイルスの出現を抑えることも分かった。
 安田教授は「高度感染症研究センターでBSL4実験が実施可能になれば、動物実験などで治療効果の評価をさらに進めることが可能になる」と話している。


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